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◆遺伝子組み換え食品とWTO 
 

加速する遺伝子組み換え作物の自由化

   GATTウルグアイ・ラウンド以降、農業や食料も他の鉱工業生産品と同様に扱うことを目的に国際的な貿易ルールが作られるようになった。そして1996年頃から、食料輸出国の筆頭である米国やカナダで、コスト削減による生産性向上を目指し、特定の除草剤をかけても枯れない遺伝子を組み込んだり、殺虫毒素を持つ微生物の遺伝子を組み込んだりした遺伝子組み換え作物が世界を流通し始めた。現在、日本国内で認められ、大量に輸入されている遺伝子組み換え食品は大豆、とうもろこし、綿、菜種、ジャガイモ、テンサイの6品種で、どれもその殆どが表示のないまま私達の日常の食卓に上がっている。食品としての安全性は不確実で、免疫力低下や、アレルギーの原因になるとの懸念もある。また、食べ続けることにより、腸内細菌が抗生物質耐性になる危険があり、病気で抗生物質を飲んでも効かなくなる可能性が出てくる危険性もある。
 WTO体制の成立により、それまで各国まちまちであった遺伝子組み換え食品の輸出入に関する国際的な取り決めが作られることになった。WTOの中で「衛生植物検疫措置の適用に関する協定(SPS協定)」と「貿易の技術的障害に関する協定(TBT協定)」により、強い強制力をもって、各国の輸出入の基準に変更を求めてきた。WTOの率先した遺伝子組み換え作物の自由化は、多国籍企業による農業支配と、遺伝子組み換え作物の移動・拡散による生態系破壊を防ぐため、国際取引を規制しようとする動きを阻むものであり、WTO加盟国が公共の健康を保護する政策を阻止するものである。
   
"守る権利"か"貿易障壁"か?
 

  TBT協定はWTOの農作物や鉱工業産品の貿易上を障害となりうる各国の技術的な基準を取り除く役割を持っている。このTBT協定により、農産物の貿易において、その生産過程や生産方法(PPMs)の違いによる輸入規制認められておらず、遺伝子組み換え作物は、組み換えられていない農産物と実質的に同等だと見なしている。つまり、TBT協定は遺伝子組み換え作物の表示を禁止はしていないが、表示による輸入規制を行うことを禁止し、表示の義務も求めていない。したがって、未だに多くの国では、消費者が、遺伝子組み換えの食品かどうかを判断することが難しい。

   
組み換え作物は実質的に平等?
   
  上記で述べたようなWTOの原則は、特に発展途上国に大きな影響を与えている。
1985年から始まったGATTウルグアイ・ラウンド以来、農産物、知的所有権、サービス貿易など様々な分野で自由化交渉が促進されてきた。しかし、以上のようなWTOの原則により、途上国では、弱体な国内産業を保護するための対外規制導入が難しくなったり、公益に関する国内法が次々と退けられるなどの弊害が起こっている。その結果、南北格差がますます拡がることに
なった。
   
TRIPS協定との関係
   現在、WTOのTRIPs協定(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)において、生物は特許の対象から外すべきだとする途上国の要求は受け入れられておらず、生物多様性条約やカタルへナ議定書との整合性についても明確化されていない。
 これは、バイオ企業が、途上国固有の種子を活用した組み換え遺伝子に特許をかけ、自家採種や種子の保存を特許侵害として訴えることを容認している。
   
遺伝子組み換えをめぐる紛争解決
 

現在、遺伝子組み換え作物の自由化を推す米国と、健康・環境に関する問題が懸念され、又、その安全性が保障されていないとして遺伝子組み換えの自由化に反対するEUとが大きく対立している。そして2003年5月13日、米国は、EUの遺伝子組み換え作物規制が科学的根拠に基づいたものではないとして、WTO紛争解決パネルへ提訴した。
 過去の農産物関連の紛争解決による決定では、SPS協定第5条にある予防原則において、WTO加盟国に科学的な証拠がない場合でも、その安全性、又は、欠陥を立証するために猶予期間として、農産物の一時的な輸入規制を認めている。
 1989年にEUはこの予防原則に則って、米国からのホルモン牛肉の輸入規制を試みた。WTOの紛争解決パネルは、SPS協定の予防原則を適用する場合でも、危険性を証明する何らかの科学的根拠が必要だとEUに対して勧告した。この勧告は遺伝子組み換え作物に関して、科学的に危険性が立証されていないものは認可すべきという米国やバイオ企業の意向を支持するものである。これに対して、EUは遺伝子組み換え作物についても、その安全性の審査の基本を予防原則に置くべきだとしている。それは、科学的に危険だと立証されたときには手遅れになる可能性が強いからである。
 最後に、WTOによる遺伝子組み換え作物の扱いは、SPSやTBT協定、TRIPs協定とWTO内にある強い紛争解決パネルにより、偏った科学認識のもと、私たちの食料安全保障、食料主権、環境が脅かされてている。今後、遺伝子組み換え作物の自由化がさらに進むことにより、巨大なバイオ企業による不当に安い遺伝子組み換え作物に対抗できない小農民(特に国内政策による農業の助成が受けられない50〜80%が農業人口の途上国において、そのほとんどが小農民)の生活が更に脅かされることになる。それは、WTOによる貿易自由化の名の下に、多国籍企業による食料の供給システムを一層、独占支配させ、貧困解決はおろか、経済格差をますます拡大させるだろう。

   
   

【参考資料】
“The Attack on GM Labelling,”The World and the World Food System:
a trade union approach, International Union of Food, Agricultural, Hotel,
Restaurant, Catering, Tobacco and Allied Worker’s Associations、2002年

河田昌東、転換期の遺伝子組み換え作物:ますます深刻になる健康と環境への安全
性、
いらない!遺伝子組み換え食品全国集会、2003年3月25日

古賀真子、“コーデックスNGO行動への参加を!”消費者リポート、日本消費者連盟
2003年2月17日号

Sale of the Century? ---People’s Food Sovereignty: Part1- the implications
of current trade negotiations, Friends of the Earth, 2001年11月

GM Trade War Looms: How will the World Trade Oragnization handle the US/EU
food dispute?, Friends of the Earth, 2003年5月

リチャード・マクナマラ、“「とも食い」というテロリズム、”バンダナ・シヴァ
の眼V、週刊金曜日、2002年12月6日

 

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