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「メディアを変えれば世界が変わる」シンポジウム報告

「メディアを変えれば世界が変わる」〜マスメディアの社会的責任を問う〜
(2009年2月22日、東京で開催。参加者数160人)

マスメディアを変えるということ

ASJは09年2月にシンポジウム「メディアを変えれば、世界が変わる」を開催した。エネルギー・食糧・環境など、様々な問題を抱える今日、情報の流れが健全でない構造に警鐘を鳴らし、新しいマスメディアの仕組を提案することが目的であった。メインテーマは「マスメディアの社会的責任を問う」である。「メディアCSR」という概念は、日本ではまだなじみがなく、インターネットでもほとんどヒットしない。しかし、市場主義・競争原理の中、マスメディアが企業としてどう社会と向き合い存続すべきか。日本でもこのような議論が市民の側から生まれるべきだろう。
シンポジウムに出演したゲストは現代メディア・フォーラム代表・柴山哲也氏、元電通・CMプランナー・マエキタミヤコ氏、ドキュメンタリー映画「六ヶ所村ラプソディー」監督・鎌仲ひとみ氏、CSR情報誌「オルタナ」編集長・森摂氏。「マスメディアをCSRから変えるのは難しいのでは」「市民がマスメディアを変革することをあきらめてはならない」など、事例やデータを交え、複眼的な立場からメディアCSRの妥当性について話し合われた。開演前・終演後にとったアンケートでは、「マスメディアをよりよく変革することが可能」と答えた個人は8%増え、全体の43%に及んだ。

メディアCSRは報道のCSR

シンポジウムでは、マスメディアには「報道のCSR」として、次の5つの責任が発生することが整理された。

報道のCSRとは

被害者・報道対象⇔【1:取材】→【2:編集】→【3:圧力】→【4:視聴率】→【5:反響】⇔読者・視聴者

  1. 取材における責任
    (記者は現場に赴き偏りなく取材し、背景分析も加えた記事を制作するという責任)
  2. 編集における責任
    (編集責任者がどのような意図で番組を企画、編集したかを明らかにする責任)
  3. 株主・広告主との関係における責任
    (株主・広告主の利益を損なう恐れがある場合に起こる圧力から独立を保つ責任)
  4. 視聴率に関する責任
    (視聴率を上げるための演出や加工に関する透明性を担保する責任)
  5. 視聴者との関係における責任
    (視聴者および取材対象が発する声に真摯に応え、情報を公開する責任)

これらの責任が果たされているかどうかを、CSR報告書の中で情報を公開することを求めることで、「視聴率主義」「スポンサーによる圧力」といった弊害も軽減され、市民がマスメディアを正しく用いることができる。メディアのステイクホルダーには「知る権利」を持つ市民だけではなく、戦争や環境破壊など人為的な理由で人知れず殺される「被害者たち」も存在する。世界人権宣言が「いかなる人種も抑圧から逃れ自由を得る権利」を保証する中で、メディアは「その理念を遂行する責任を負う」存在としての期待がある。その中で、マスメディアが視聴者の「知る権利」に応える責任を果たさないとき、それは戦場や占領地で抑圧される被害者たちの「知らされることで自らの自由が守られる権利」に対する責任も果たしていないといえるのではないか。

まとめ

複雑で見えにくい構造の中で、ともすると声なき被害者に対する加害者・共犯者となりかねない日本の私たち。彼らの命を守るためにも情報の流れを健全にしていきたい。ASJは、今後マスメディアのCSR担当者を招いたフォーラム開催や、市民とメディアの対話を行って、報道の透明性を強化することを目指す。

【コラム】メディアCSRのためのアクションアイデア

シンポジウムで提案された様々なアクションの一部を紹介。

CSR報告書の発行を要望する

個人として利用している大手メディアに、手紙や電話、メールを通してCSR活動について質問をしてみよう。シンプルに「なぜCSR報告書を出さないのか?」と聞くのも有効だ。団体であれば公開質問状を送り、結果を公開することもできる。

ジャーナリストが創るメディアCSR講座

記者はメディアの最大のステイクホルダーのひとつであり、メディアCSRを推進する主役である。マスメディアが「メディアのCSR」そして「報道のCSR」に取り組むようになるためには、骨太ジャーナリズムを学び、マスメディアを中から変革する記者の力が必要だろう。既存のジャーナリズム講座の新プログラムとして、もしくは新設の講座として、「メディアCSR講座」を企画し、記者のネットワークづくりをしてはいかがだろうか。

市民が創るメディアCSRの第三者監視機関

米国では民間のメディア格付機関が多く存在し、視聴者から一定の信用を得て、メディアの第三者監視機関として機能している。日本にも第三者による監視機関の一つとして放送倫理・番組向上機構(BPO)が設置されているが、その委員はテレビ企業自身によって選出されており、放送倫理・人権、青少年への影響に関する、いわば自主的な監視を目的としている。しかし、ここで扱う倫理問題をクリアしても、「権力を監視する」という報道機関本来の機能を促すには不十分のようにもみえる。もしマスメディア自身が、報道や広告について明確なビジョンを示し、明確な基準を持って報道を行い、それを外部から評価・監視できる複数の第三者機関が評価をするようになれば、日本のメディアははるかに良くなるだろう。

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