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マスメディアこそCSR報告書の発行を

「メディアCSR」について考える

持続可能な社会を形成し、メディア自身がその公共原理と市場原理の狭間で「公共の福祉に適合するように規律され、その健全な発達を図る」ためには、社会的責任を果たすメディアとしての「メディアCSR」が必要不可欠ではないだろうか。CSR(Corporate Social Responsibility)とは「企業の社会的責任」と訳され、しばしば江戸時代の近江商人の「三方よし」の理念で説明される。すなわち「売り手よし、買い手よし、世間よし」の「三方よし」を商売の理想とする考え方である。売り手は社員や株主、買い手は顧客、世間は社会を意味し、その全てのステイクホルダー(利害関係者)に満足いくビジネスを企業自らが目指すべし、という企業の自主性に基づく経営の在り方といえる。

現在のCSRの潮流には、次の3つの方向性が求められている。すなわち、環境面だけでなく、より多様な評価軸で社会的責任を果たすこと。「本業を通したCSR」こそ積極的に果たすこと。中小企業もCSR活動が求められること。この流れは今後も加速していくだろう。そして社会的影響の大きいマスメディアも、放送法第一条にあるような理念を全うするためにCSR活動に取り組むべき時代になりつつあるのである。

日本の新聞社には監督する所轄官庁が存在せず、記者クラブやクロスオーナーシップといった問題を抱えながらも、政府からも市民からもコントロールを受けない立場を貫いてきた。それゆえ「表現の自由」が束縛されかねないCSR活動には消極的だ。一方で、許認可制であるテレビメディアは、電波という公共の資源を使う以上、新聞に比較してより強くCSRが求められる。放送という社会的影響の大きい事業を独占的に行う以上、利益追求のみの番組づくりはあり得ない。

まずはCSR報告書の発行から

09年8月時点で、日本の大手テレビ局・新聞社でCSR報告書を発行しているところはまだない。新聞では朝日新聞が、テレビではNHKだけが唯一、環境報告書を発行している。NHKは、99年に「NHK環境自主行動計画」を策定、02年には初めて環境報告書を発行した。今年で7冊目となる。内容は主に本業であるメディア事業を通してどれだけ環境番組を放送したかと、一企業としてどれだけ環境負荷を減らしたかについてである。グローバルに視聴される英国の公共放送BBCが発行しているCSR報告書はどうか。こちらは「BBCと関わる全てのステイクホルダーと対話するためのツール」と位置付けられている。市民活動の寄付集めを広く支援する取り組みや、「社会的責任を果たすためにメディアが業界全体として何を出来るか」を話し合う、「メディアCSRフォーラム」への継続的な取り組みなど、その内容は多岐に渡る。メディアの公共性を経営レベルで制度化するために、CSR報告書を発行するということは視聴者や広告主にとって非常にわかりやすい情報公開のあり方と言えるだろう。

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