【初級編】
Q1.エコ貯金ってなに?
A.「エコ貯金」とは、環境や人にやさしく、地域・社会のためになるお金の流れをつくることです。具体的には、市民一人ひとりが自分の銀行口座や出資先・投資先を、銀行の「社会性」や「環境貢献への取り組み」を考慮して選びなおす新しい預貯金スタイルのことを指します。社会的責任を果たしている企業、あるいは社会的事業(福祉、教育など)に取り組んでいる市民活動団体に、より多くの資金が提供されることを目的としています。
Q2.銀行や郵便局は普段どんな企業に融資しているの?
A.メガバンクに関していうと、その大口融資先には大企業の名前が並びます。例えば三井住友銀行の場合、最大の融資先は東京電力で2001億円、2番目がダイエーで1806億円、以下、住友商事、三井住友建設、オリコと続きます(2005年3月末現在)。もちろん、こうした大企業以外にも、メガバンクは中小企業や個人などにも融資していますが、地方銀行や信用金庫に比べればその比率は小さいと考えられます。また、郵便局に預けたお金のほとんどは政府の予算に回されます。
Q3.銀行に預けたお金がなぜ戦争に使われるの?
A.銀行は集めた預金で企業や個人に融資するだけでなく、日本政府が発行する国債を購入しています。この国債は政府の歳入として扱われます。政府はそうしたお金の中から為替介入(ドル買い)行い、アメリカの国債を購入し莫大な戦費の調達を助け、イラク戦争を支えてきました。日本にいる私たちの預金は銀行を通して日本政府に行き、その後日本政府がアメリカ国債を購入することでアメリカ政府の歳入となるわけです。アメリカ政府はそうした資金を使ってイラク戦争を行ったため、私たちのお金がめぐりめぐって戦争に使われたということになります。
Q4.どこに預けるのがエコ貯金なの?
A.私たちは、市民一人ひとりが主体的に金融機関を選択することが重要と考えているため、特定の金融機関をお勧めしたり、金融機関を格付けしたりすることは行っていません。ただし、社会や環境に配慮した取り組みを先進的に実施していると思われる金融機関については、例としてリストアップし情報提供をしているので、金融機関を選ぶ際に参考にしていただければと思います。
Q5.エコ貯金プロジェクトって実際にお金を集めているの?
A.私たちは実際にお金を集めているわけではありません。私たちが集めているのは、あくまで「エコ貯金をします」という宣言です。エコ貯金宣言とは、市民のみなさんに自分の預貯金をどこからどこへいくら預け変えますという宣言のことです。
Q6.NPOバンクってなに?
A.NPOバンクとは、地域社会や福祉・環境保全のための活動を行うNPOまたは個人に融資することを目的に設立された、市民のための非営利バンクです。実績や担保の有無だけで事業そのものを判断するのではなく、事業の社会性や公益性を重視し、必要な資金を融資することで、より良い未来づくりのために力を注ぐ事業、そして地域の活性化に積極的に取り組む事業を応援しています。現在、全国には9つのNPOバンクがありますが、各NPOバンクによって、その特色やビジョンはさまざまです。(参考:全国NPOバンク連絡会)
Q7.NPOバンクに出資をすると、利息がつかないのでは?
A.確かにNPOバンクに出資をしても利息はつきません。その上、各NPOバンクのHPには出資をする際の注意事項として、元本の保証をしていないことをはっきりと明記しています。また、現時点で配当を行っているところはありません。しかし現在、NPOバンクに出資をしたいという人が増えています。自分のお金が有意義に使われ、まわりまわって自分の生活を豊かにしてくれる、そんな可能性と、自分のお金がどんなところに使われているかを知ることができる、その安心感が出資者には大きな喜びであり、お金では測れないうれしい配当となっているようです。
Q8.信金やろうきん、NPOバンクに預けると不便なのでは?
A.確かに、社会性や環境に配慮した融資を行っている金融機関は信用金庫や地方銀行、あるいは労働金庫やNPOバンクが多く、こうした金融機関はメガバンクとは違い、全国的なネットワークを持っているというわけではありません。しかし、信用金庫や地方銀行、労働金庫であれば、コンビニATMを利用できるケースも多く、手数料も一部キャッシュバックされるケースもあるため、さほど不便を感じることはありません。また、預金をすべて移し変えるのではなく、普段使わない分の預貯金だけをそうした金融機関に移し変えるなどの工夫をすれば、利便性をそれほど損なわずにエコ貯金をすることができます。
Q9.なんでエコ貯金宣言しなきゃいけないの?
A.エコ貯金宣言は、預金者の意識と金融機関の取り組みの両方を変えるためのものです。市民から集めた声を金融機関に届けることで、市民の貯金に対する意識を変えるとともに、金融機関のシステム変革を図ろうとしています。一人ひとりがバラバラに口座を変えても、金融の仕組みはなかなか変わりません。しかし、みんなが力を合わせることで、よい声を大にして金融機関にメッセージを伝えることができると私たちは考えています。
Q10.まだ預け先の金融機関が決まってないけど、エコ貯金宣言はできる?
A.はい、できます。今どの金融機関に預け変えるかを決定できない場合は、預けかえる先は「検討中」として宣言することができます。
Q.11.去年の金融機関の提言ってどんなもの?結果は?
A.皆さんから集めたメッセージと共に、10の提言を金融機関へ届けました。その中身は、「社会的事業への融資優遇制度の導入」や「ネガティブスクリーニング」を導入した社会的責任投資ファンドの開発・販売」、「赤道原則への署名」などです。これらの提言は既に海外の先進的な金融機関では実際に行われている取り組みばかりです。提言が直接、金融機関を動かしたという報告はありませんが、ここ最近になりCSRレポートを発行する金融機関は増加しており、日本の3大メガバンクは赤道原則への署名も行いました。エコ貯金プロジェクトの啓発運動、そして金融機関への提言は、さまざまなメディアにも取り上げられており、社会的責任を意識しはじめた金融機関への取り組みに影響を与えていると考えています。
Q.12.エコ貯金キャンペーンの実施母体は?自分も活動に参加できる?
A.エコ貯金キャンペーンはA
SEED JAPANというNGOが実施しています。A SEED JAPANは国際青年環境NGOで、エコ貯金キャンペーン以外にもごみゼロナビゲーションなどさまざまな取り組みを行っています。また、エコ貯金チームでは随時ボランティアスタッフを募集していますので、興味のある方はエコ貯金チームまで気軽にご連絡ください。
Q13.預貯金型エコ貯金、出資型エコ貯金、投資型エコ貯金のちがいは?
A.預貯金型エコ貯金とは、その名のとおり社会性を考慮してお金の預け先を選ぶことです。この場合、口座が変わる以外に一般的な預貯金とそれほど大きな違いはありません。出資型エコ貯金とは、NPOバンクに出資することを指します。NPOバンクに出資した場合、お金を自由に引き出せるわけではありません。また出資による配当を得ることはできません。投資型エコ貯金とは、SRI型の投資信託にお金を投資することです。この場合、投資したお金は投資信託で選ばれている企業の株式や債券の購入に充てられます。投資型エコ貯金の場合元本保証はありませんが、通常の預貯金より良い利率を得ることができる可能性があります。
【上級編】
Q.14.郵便貯金によって支援された環境破壊って具体的になに?
A.インドネシアのコトバンジャムダム建設があげられます。このダムはODA(政府開発援助)のプロジェクトとして立ち上がりましたが、コンサルタントをはじめ、このプロジェクトにお金を出している企業は、都市銀行の大口融資先としてあげられる企業ばかりでした。このダムが建設されたことにより、地元の役五千世帯が家や農地を失い、森林や貴重な動物などにも深刻な被害を及ぼしています。
Q15.自分で金融機関の環境に対する配慮や社会性について判断するときに、何を参考にす ればいいの?
A.エコ貯金ナビに社会や環境に配慮した取り組みをしている金融機関がリストアップされています(参照:地方銀行リスト,労働金庫リスト)。また、SIF-JAPANや「持続可能な社会と金融CSR」にも、エコ貯金に関する情報が掲載されています。そのほかにも、最近ではそれぞれの金融機関もHPで社会性や環境に対する考えをPRしていることが多くなってきたので、それらを参考にしても良いかもしれません。
Q16.SRIとエコ貯金、どうちがう?
A.SRI(社会的責任投資)は、エコ貯金の投資型です。収益性だけでなく、企業が社会的にどういうことをしているかまでを見て、投資をするというもの。最近では優良な企業の株式を組み入れたSRIファンドが人気です。投資型エコ貯金と預貯金型エコ貯金の大きな違いは、元本保証があるかないかです。前者は自己責任で運用を行いますので、元本の保証はありません。後者は、金融機関から金融機関へ自分のお金を預け変えることを言いますので、預金保険制度により預金者の元本は保障されています。少々リスクは高いですが、自分が良いと思う企業、そして良くなってほしいと思う企業の株を買うことが、企業への意思表示にもつながります。一歩すすんだエコ貯金として、投資型エコ貯金を選択肢の中に入れてみるのも良いのではないでしょうか?
Q17.預金と貯金のちがいとは?
A.貯金とは基本的に郵便局や農協系金融機関などにお金を預けること、あるいは預けたお金のことを指します。預金は、銀行・信用金庫などにお金を預けること、あるいは預けたお金のことを指します。
Q18.社会性などを重視して融資していては、貸し倒れが起こるのでは?
A.確かに、社会性や環境に対する取り組みを重視していたのでは、利益重視の融資よりも貸し倒れがおこりやすいのではないか、というように考えられがちです。しかし融資先が企業の場合、社会性や環境に対する取り組み事業というのは、むしろ健全な経営が行われている場合が多く、決して貸し倒れが多いというわけではありません。また融資先がNPOの場合でも、融資する金融機関やNPOバンクが慎重に審査し、融資した後も継続的に運用をサポートしていく場合が多いので、貸し倒れは決して多くはありません。実際にNPOバンクによる融資で貸し倒れが起こったのはいまだ一件しかありません。(2006年10月現在)
Q19.NPOバンクに出資するとき、地元のNPOバンクを選ぶべき?それともビジョンを基準にすべき?
A.NPOバンクにはそれぞれに特色やビジョンがありますので、基本的には地域とビジョン、両方の観点から判断することをお勧めします。しかし、自分のお金を他のどの地域でもなく、自分の街で使ってもらい、地域活性化に役立てたいと思うなら、地元のNPOバンクに出資をするのもひとつの手なのではないでしょうか。
Q20.ap bankには出資できないの?
A.ap
bankは小林武史、桜井和寿、坂本龍一の3人の出資により設立されたNPOバンクで、現在のところ出資は募集していないようです。ただし、ap
bank fesにおける収益金がap bankの活動に充てられるので、ap bank fesに参加することで、ap
bankの活動を手助けできます。
Q21.エコファンドって本当に環境に配慮しているといえるの?
A.近年多くのエコファンド(SRI型投資信託)が登場してきましたが、その投資先企業を見てみると大企業が多く、原子力発電所を持っている電力会社なが含まれている場合もあります。エコファンドを選択する場合は、その表面上のイメージに惑わされることなく冷静に内容を検討する必要があります。(参照:「SRIファンドは本当にエコなのか?」
【pdf/43KB】 )
Q22.地銀や信金、労金に預けたお金は絶対に環境破壊に使われないの?
A.絶対に環境破壊に使われないというわけではありません。大企業への融資や国債の購入などにも、使われていることは事実です。しかし、地銀や信金、労金のいくつかは、個人や地域の中小企業、NPO事業に積極的な融資を行っています。その取り組みは、社会性・地域性という視点から判断すると、メガバンクに比べれば先行していると言えます。
Q23.メガバンクも環境に配慮した取り組みをしているのでは?
A.確かに、近年メガバンクも環境に配慮していることを盛んに宣伝するようになってきており、こうした傾向は評価することができます。しかし、口座を選ぶ際に注意しなくてはならないのは、あくまで融資先がどのような企業であるかということです。メガバンクは一部には環境配慮型の融資をしているところもあるようですが、全体を見るとまだまだそうした融資の割合は小さく、とても十分とは言えません。
Q24.エコ貯金キャンペーン、去年は3億円だったけど、今年の目標は?
A.今年の目標額は5億円としています。ただ、額を積み上げるだけでなく、みなさんのメッセージを金融機関に届けることこそが大事だと考えています。
Q25.3億円や5億円分のエコ貯金宣言が集まっても、ほとんど意味がないのでは?
A.確かに、巨大な資金規模を持つメガバンクから見れば、3億円や5億円といった額はそれほど大きい額ではないかもしれません。しかし、エコ貯金宣言額というものはあくまで目安であり、市民一人ひとりが意思を持って口座を選ぼうとしている姿勢はメガバンクに対してでも十分に意味のあるものです。
Q26.窓口に行けば、どこの金融機関でもすぐに口座開設できる?
A.残念なことに、必ずしもどの金融機関でも簡単に口座が開けるわけではありません。例えば地域金融機関の場合、それぞれの地域の住民でなければ口座開設が認められていないケースがあります。自分の住んでいる地域に気に入った金融機関があるのが最も良いのですが、そうでない場合は、預けたい金融機関の窓口でなぜ口座を作りたいのかを説明する必要があることがあります。
Q27.今後、エコ貯金プロジェクトとしてはどんな活動をしていく予定なの?
A.引き続きエコ貯金アクションを呼びかけ、市民に自らの意思でお金の預け先を選んでいくことを促していくとともに、金融機関へのさらなる取り組みを行っていく予定です。それに加え、金融機関、教育者と協力し、環境配慮型の視点を加えたプログラムを作成し、教育現場に導入していくことを目指します。
Q28.A SEED JAPANは、どこにエコ貯金しているのですか?
A.A
SEED JAPAN事務局では、環境への配慮や社会性、そして事務所の所在地から見た利便性などを考慮して、静岡銀行と中央労働金庫にお金を預けています。
Q29.エコ貯金宣言に書いた個人情報はしっかりと守ってもらえる?
A.はい。A
SEEDJAPANでは、利用者のプライバシーに関わる情報の保護に細心の注意を払って取り組んでおります。エコ貯金宣言に際しご記入いただいた個人情報は、本キャンペーン以外の目的では使用しませんので、ご安心ください。
Q30.エコ貯金プロジェクト以外で環境と金融に関する活動をしている団体ってあるの?
A.エコ貯金プロジェクト以外に日本で環境と金融に関する取り組みをしている市民団体としては、全国のNPOバンク連絡会やSIF-JAPANなどが挙げられます。全国NPOバンク連絡会は、その名とおり全国でNPOバンクを運営している方々による団体で、NPOバンクの普及・拡大に取り組んでいます。SIF-JAPANでは、日本でSRI(社会的責任投資)の普及・発展を目的とした活動を行っています。ただし、エコ貯金プロジェクトのように、環境と金融全体を視野に入れながら活動を行っている団体は他にないといえるでしょう。
Q31.海外でもエコ貯金プロジェクトみたいな活動って行われているの?
A.欧米では、SRIファンドの取り組みが非常に活発です。特に、環境破壊や人権侵害を起こしている企業に対して、銀行が融資しないように、市民自らが投資家となり圧力をかける、ネガティブスクリーニングが積極的に導入されています。また、NGO団体などによる市民の預貯金に対する意識を変えるような取り組みも報告されており、市民のお金に対する意識や、社会や環境に配慮した取り組みを行う意識は、日本人よりも高いかもしれません。