ファクトシート
2002年7月17日
ヨハネスブルグ・サミットが成功するかどうかは
企業責任の国際的ルールづくりにかかっている。
企業責任を巡る経緯
多国籍企業の途上国での活動が問題になったのは一九七〇年代のことだ。度重なる多国籍企業の無責任な行動に対し、一九七五年には多国籍企業の行動をモニタリング(監視)をするために、国連多国籍企業センターが作られた。一九七六年には、法的拘束力を持たない自主的なガイドラインであるOECD多国籍企業ガイドラインが作られた。
十年前の地球サミットでは、「法的拘束力を持った企業責任に関する国際的ルール」を合意することに失敗し、一九九三年には、多国籍企業をモニタリングしていた国連多国籍企業センターが国連の財政難と構造改革の下で廃止となった。
この十年間に多国籍企業の影響力はますます拡大し、気候変動枠組み条約や生物多様性条約などの多国間環境条約の会議やWTO(世界貿易機構)などの経済関係の国際会議などでも、この影響は如実に現れるようになった。
国際的なルールづくりの必要性
現在、多国籍企業の行動をめぐる国際的なルールや原則は、いくつか存在している。しかし、いずれも自発的なもので、守らないと罰せられるものではない。しかし、こうした自発的な主導権しか存在していないことによって、今だに、多国籍企業の無責任な行動は世界中で繰り返されている。こうした状況をなんとか改善するために、ヨハネスブルクサミットに向けて多くのNGOが求めていることが、「企業責任に関する国際的なルールづくり」である。
つまり、各国が国連の下で、多国籍企業の行動に関するルールを合意し、監視機関を再び設立させ、ルールを破ったときの罰則がもうけられていることが必要となる。こうした国際的に公正で透明性の高いルールができることで、私たち市民は企業活動の情報を得ることができ、買い物や就職活動、貯蓄や投資などを選択するときに判断できるようになる。
ヨハネスブルクサミット準備会合での交渉
2002年1月に開かれた第二回準備会合ではアメリカ、カナダ、メキシコ、韓国が合意文書の中から企業責任に関する記述を削除するよう求めた。この第二回準備会合の後に出された議長ペーパーでは「企業の社会的責任を
拡大する」という記述は残されていたが、「グローバルレポーティングイニシアティブ(GRI)等を通じて企業責任を強める」
と自主的な取り組みを中心に掲げていた。
2002年5月9日に第四回準備会合にむけて、サリム議長が提案した「議論のための議長テキスト」では、「GRIやISOのような自主的な取り組みを通して企業責任を強化する」「グローバル・コンパクトやOECD多国籍企業ガイドラインを通して良い
事例を交換する」と書かれていた。インドネシアで行われた第四回準備会合では、途上国が企業責任を強化するための国際的な枠組み作りを発展させることを求めていたが、先進国の強硬な反対によって、「枠組み作り」という言葉が削除されてしまった。
多くのNGOは「自主的な取り組み」ではなく「法的拘束力を持った国際的なルール」を求めている。インドネシア準備会合におけるマルチ・ステイクホルダー・ダイアログでは、国際NGOや女性、先住民、農民、青年などのグループの代表者が、企業責任に関する国際的なルールの必要性を求め「企業の社会的
責任に関する法的拘束力を持った国際条約が必要である。」と主張していた。一方、BASD(持続可能な開発のためのビジネスアクション)会長のロード・ホルム氏は3月
に、「NGOが提案しているビジネスに対する規制は企業の息の根を止めることだ」と述べ、企業責任に
関する国際的なルールづくりに反対している。
私たち国際青年環境NGO「A SEED JAPAN」は「持続可能な社会」という究極の目的を達成する
ために、企業の社会責任に関して法的拘束力を持った国際条約が必要だと考えている。そして2002年8月に
ヨハネスブルグで開催される「持続可能な開発のための世界サミット」において各国政府に対し、以下の事を
合意するよう求める。
各国政府は 「法的拘束力を持った多国籍企業の責任に関する国際条約」を締結するための国際会議をスタートさせること。そして、この条約において以下のことが必要である。
1.一定以上の規模の企業に対し、環境報告書等の発行を義務づける制度を作ること。
2.国連の機関として、多国籍企業の行動をモニタリングする機関を再び設立すること。
3.環境・労働・社会的基準に違反した企業に対し罰則を設けること。
上記に関するお問い合わせ
A SEED JAPAN リオマイナステン・キャンペーン担当:鈴木亮・田辺有輝
〒160-0022 新宿区新宿5-4-23 Tel:03-5366-7484 Fax:03-3341-6030
E-mail:asj@jca.apc.org URL:http://www.rio-10.org/
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