2010年6月27日(日)
第3回エコ貯金フォーラムを開催
2010年6月27日(日)、東京・広尾のJICA地球ひろばにて、「第3回エコ貯金フォーラム」を開催しました。
金融機関の方から学生の方、NPOの方、会社員や公務員の方など、様々な立場の100人の方にご来場いただき、 7時間のフォーラムと懇親会は、とても密度の濃い時間となりました。
フォーラムのオープニングとして、まずエコ貯金プロジェクトの浦山から、「エコ貯金プロジェクトのこれまでとこれから」と題した発表を行い、
エコ貯金の考え方や、10億円に達したエコ貯金宣言など、これまでの活動の報告を行いました。また今後の展望として、 ネガティブスクリーニングをさらに発展させていきたいこと、エコ貯金を広めてソーシャルファイナンスを後押ししたいということをお伝えしました。
オープニング「エコ貯金プロジェクトのこれまでとこれから」
次に、基調講演「預金者は主権者〜社会を変えるための金融〜」と題して、NPOバンク「未来バンク」代表である田中優氏から預金者に向けたメッセージをいただきました。
田中氏からは、まず現在の日本経済の危険性や、金融機関に預けられた資金が社会問題を作っているなどの問題点が提示されました。
その上で、市民の金融機関であるNPOバンクが日本中に広がっていることや、 地域でお金を循環させている取組みなどが紹介され、預金者である市民が主体となって動きをつくることの重要性が話されました。
また、会社に勤めていなければ生きていけないような生活は危険だとし、自分を多様化し、 社会の中で生活の糧を得られるようにすること、お金に頼らない生活を目指すことが大切だと伝えられました。
基調講演「預金者は主権者〜社会を変えるための金融〜」
次のトークセッション1では、HSBC顧問である山田晴信氏に、 HSBCグループのコーポレート・サステイナビリティ(CS)活動についてお話しいただきました。
HSBCでは、取締役会の下にCS(持続可能)委員会を設置し、 投融資などの金融活動に対して産業分野別に融資などのガイドラインとポリシーを策定・公表し、
融資先企業の認証などを行っていることなどが紹介されました。
コーディネーターであるエコ貯金プロジェクトの土谷から「こうした活動を続けていく中で、一番の推進力となったのは?」 という質問があると、山田氏からは「まず現在のグリーン会長が率先してコミットし、実行可能な形で事業に落とし込んでいった。
また従業員が出張として海外のボランティア活動に参加できる制度があり、これまで2000人以上が参加した。 そうした従業員が世界中にいることが、CS活動を続けていく上で支えになっている。」として、
全社的な取り組みが功を奏したことを話していただきました。
トークセッション1「金融機関におけるサステナビリティの実践」
昼休みを挟んでのトークセッション2は、大和証券の山本聡氏、中央労働金庫の高瀬美由紀氏に登壇いただきました。 エコ貯金プロジェクトの寺澤が進行を行ない、一職員の立場で社会的な金融を実現するために何ができるか、各社の事例を交えてお話いただきました。
山本氏は、日本初のマイクロファイナンス投資商品である“マイクロファイナンス・ボンド”を立ち上げた動機として、 「マイクロファイナンスの融資額はどんどん伸びているが、
貧しい人たちが必要とするお金はその十倍ある。 そのギャップを埋めていきたいと思った」と、 当時の思いを語っていただき、
「投資は持続性がある。10万円寄付したと思って、100万円投資する発想を」として、社会的な投資の活用を促されました。
高瀬氏からは、労働金庫が行っている“ろうきんNPO事業サポートローン”についてお話いただき、 「阪神・淡路大震災からボランティアという言葉が広まってきて、営利を目的としない思いでつながる人たちが増えてきた。
そのような社会作りで、ろうきんも 手を取り合うべきと考えた」と説明され、
企業理念とソーシャル・ファイナンスの結びつきを強調されました。
トークセッション2「現場からのボトムアップで目指すソーシャルファイナンス」
トークセッション3では、地雷廃絶日本キャンペーンの目加田説子氏、高崎経済大学教授の水口剛氏、 金融庁の横尾光輔氏に登壇いただき、
「ソーシャル・ファイナンス実現のために預金者は何が出来るか」というテーマをお話いただきました。
目加田氏からは、非人道的な兵器とされるクラスター爆弾について、日本も署名している禁止条約の説明があり、 クラスター爆弾製造企業へ融資を行っている金融機関の「不名誉リスト」に日本の4金融機関の名前が載っていることが紹介されました。
そこで、こうした問題に対して預金者が金融機関へ対応を呼びかける「どこに行ってる?私のお金」キャンペーンの紹介がありました。
その話を受け、横尾氏から「金融機関が社会的責任を踏まえていないと、国民からの規制論が強くなる。 国民が金融機関の役割として何を期待しているか、金融機関は考えてほしい」と、
水口氏からは「非人道的な企業には投資しないことは世界の潮流となってきている。 銀行の融資方針として打ち出すことは日本の銀行にも可能なのではないか」といった意見を頂きました。
大村が「預金者が"私の”お金のことと考えることが重要」と締めくくり、 金融機関の自主的な対応と、それを後押しする市民の声の重要性が認識される時間となりました。
トークセッション3「ソーシャルファイナンス実現のために預金者は何ができるか」
最後のパネルディスカッションは、山田氏、目加田氏、山本氏、ブルームバーグの黒崎氏、 エコ貯金プロジェクトの小野塚が登壇し、青木将幸ファシリテーター事務所の青木将幸氏の進行で行われました。
初登壇となる黒崎氏からブルームバーグについての紹介があり、 「ブルームバーグは、金融機関などに金融情報やニュース、分析ツールの提供を行っている。
このツールを用いて、特定の製品を作っている会社を除いたり、 環境への取り組み度合いの点数が高い企業を選ぶこともできる。」
として、投融資で社会的な企業を選択しやすくしている取り組みを教えていただきました。
討議では、青木氏から「ソーシャル・グッドとは何か?」という問題提起があり、
小野塚「未来につながるもの、未来の社会が持続しつづけていくものが良いものだと思う」
目加田氏「社会によっても時代によっても違う。クラスター爆弾の問題の際は、禁止条約の議論の過程がソーシャルを定義していくものだった」、
山本氏「アクションドリブンでないといけない。べき論ではなく、できることからやっていくこと」
黒崎氏「バランスが崩れないこと、継続的に長期的に続くもの」
山田氏「自分の会社がエゴイスティックに利益追求に走ると、迷惑が自分にも返ってくるということが広く共有されることがよき社会のために重要。
社会で共通して良いものを考えることは、コミュニティの中で人と人がどう考えるかに帰着する」といった意見が集まりました。
パネルディスカッション
「ソーシャルファイナンスの発展のために〜各ステークホルダーがなすべきこと〜」
クロージングでは、水口氏から「ソーシャルの意味は誰がどう決めるのか。誰か一人が決めるのではなく、 一人一人の行動から何がソーシャルなのかが決まっていく社会であってほしい。
私たちの社会は役割分担することで発展してきたが、そうしてばらばらになったものを統合しようという動きがソーシャルファイナンスではないか。」
として、多様な人々の議論や、そうした議論を促す活動の必要性を論ぜられ、 今回のフォーラムは閉幕となりました。
会場内に設置されたホワイトボードを使って、来場者や登壇者の意見交換も行われました。