「環境金融行動原則起草委員会モニタリングレポート」第6回
環境金融行動原則、署名開始来月にも
東日本大震災から約半年の2011年9月15日(木)、
本来であれば今年3月中旬に終了しているはずだったこの委員会も、
いよいよ大詰めとなりました。回を追うごとにオブザーバーも増え、今回は約63社の企業やNGOなどが参加しました。
「総論」と業務別に3つに分けられた「各論」、そして今回新たに加えられた「事例集」から成る本原則は、
前回と同様、各ガイドライン案のワーキンググループ(以下WG)について作業の結果が共有された後に意見交換が行われ、
その後総論についても討議が行われました。
保険業務ガイドラインについて、WG座長の関正雄氏(株式会社 損害保険ジャパン)は、
リスクに特化した特徴的な機能役割を持っており国内に限らず国際的にも保険のニーズが高まっているとして、
ガイドラインに国際機関やNGO・NPOとの連携により包摂的に持続可能なグローバル社会、
活力ある地域社会の形成に寄与していくことが求められていると内容について説明しました。
「包摂的」という言葉について関氏は「先日、緒方貞子氏の話を聞き、もれなく対応していくことの大切さを再認識した」と述べました。
運用・証券・投資銀行業務ガイドラインの討議では受託者責任の範囲と解釈について議論がなされました。
WG座長の河口真理子氏(株式会社 大和総研)は
「金融機関が投資家の受託者責任に応えることは重要であり、また刻々と変化するその解釈に対応するため、
あくまでも自主的な行動を呼びかけるに留まる」と説明しました。
ステークホルダーとの関わりの中でESG(環境、持続可能性、ガバナンス)課題への意識を高め、
必要に応じてESG関連情報を適切に運用することを明記しており、
投資家と金融機関の緊張感の中で互いの存在を高め合いながら持続可能な社会の実現に寄与することが期待されます。
預貸・リース業務ガイドラインの内容についてWG座長の竹ケ原啓介氏(株式会社 政策投資銀行)は、
「取り組むべき課題が業務内容や顧客特性に応じて広範なため、あまりしばりすぎた印象を与えないよう配慮した」
と説明しました。とりわけ金融仲介機能の発揮に努めることにより、署名機関等が貸し手と借り手の間に好影響を与えることを期待しています。
また、既存の取り組みから持続可能な社会の実現に向けた対応を本業を通じて行うとしています。
総論についてはWG座長の金井司氏(株式会社 三井住友トラスト・ホールディングス)
から前回からの変更点とその理由について説明が行われました。WGの作業の中では、総論の内容が「情緒的すぎる」、
「東日本大震災のことについて触れる必要があったのか」などの意見もあったといいます。
しかし金井氏は「大震災が起きた日の夜、明日がどうなるか分からないという不安はみなさん感じられたと思う。
それはアフリカで飢餓に苦しむ人たちと近い感覚でもあると思う。」と総論に対する想いを語りました。
また委員長の末吉竹二郎氏(国連環境計画 金融イニシティブ)も「本来であれば3月にこの委員会も終わるはずであったがその直前に震災が起きた。
この議論を震災のこと抜きでこのまま進めるべきか考えたとき、やはり避けては通れないと思った」と述べました。
河口真理子氏も「“我々”という主語の捉え方のニュアンスの違い。会議に参加している人たちだけが意識していたことが、
3月11日をきっかけに多くの人が意識することになり、レベル感、スピード感としても変化したということ。
内容にまでは影響しない」と意見を述べました。
活発な議論の最後には、先日環境省を退官した小林光 前事務次官(慶應義塾大学 環境情報学部
兼 大学院政策・メディア研究科 教授)が議論を通じての所感を
(直前にあった末吉氏の「特別なことは記載していない」という言葉を受けて)
「当たり前が地になることは素晴らしく大変感銘している。前文についても謙遜必要するはない」と述べ、
第6回の起草委員会は閉会しました。
起草委員会で実質的な議論を行うのは今回が最後となり、10月以降署名が開始される予定です。
エコ貯金プロジェクトでは、原則設定後もその運用についてモニタリングを続けていきます。