最近、スーパーなどで「有機農産物」や「オーガニック」商品を目にすることが増えていますが、実は日本の有機農業は普及・推進が進んでいる状況とは言えません。世界の全農業用地に対する有機農業実施面積率に関する調査(IFOAM2003.2調べ)は、日本の有機農業実践面積率はたった0.1%で96カ国中、62位だったという結果もあります。
また、国が認める「有機農産物ラベル(有機JAS)」が貼られている農産 物は国内で生産された農産物の0.16%ほどです。
現代は、農業や食のエコシフトや安全性が求められています。その中で「有機農業の取り組みは注目され、その普及・拡大が日本にとって大きな課題となっています。
こうしたことを受けて、2006年12月に、日本がはじめて国として「有機農業」を推進すると謳った法律が成立しました。それが「有機農業推進法」です。
ちなみに、先の調査で上位を占めたヨーロッパ各国は有機農業の推進に関する法整備がその発展に大きく貢献しています。日本においても、今回成立した推進法を軸に有機農業先進国になることが期待されます。
日本では、「有機農産物」「オーガニック」と表示できるのは、JAS法が認める認証(有機JAS)を得た農作物のみです。しかし、この有機JASの認定を受けてはいないけれど、無化学肥料・無農薬で栽培された農作物が数多くあります。
こういったことを背景に同法では「有機農業」の定義を「化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業(第2条)」としています。
このように、認証制度を利用している農産物に限らず、「持続可能な農業」「環境のことを考えた農業」を推進します。
日本の有機農業者の多くは、これまで行政からの支援を受けずに、実践し、また彼らの生産物の価値をきちんと評価する消費者との間で発展してきました。
しかし、この推進法では、第四条において、「国及び地方公共団体は、前条に定める基本理念にのっとり、有機農業の推進に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。」と、国・都道府県・市町村がそれぞれの行政の中で有機農業を推進しなければならないと謳っています。
また、「有機農業の推進に関する基本的な方針」によると、平成23年度までに、下記のような目標設定を提示しています。
この推進法は議員立法で成立し、策定過程に有機農業実践者が携わっています。
行政が一方的にその内容を決めるのではなく、市民の声がふんだんに取り入れられているのです。 さらに推進法では、第四条において「国及び地方公共団体は、農業者その他の関係者及び消費者の協力を得つつ有機農業を推進するものとする。」と謳っています。
つまり、もっと有機農産物を食べたい一般の消費者や有機農産物を扱いたい流通業者、また、これまで農薬や化学肥料を使っていたけれど、これからは有機農業に取り組みたい農業者などすべての人の声を取り入れながら、どうすれば日本の有機農業が発展するのかを議論し、その推進計画に取り組む必要があるとしているのです。
この法律は、市民の声を日本の有機農業の発展に大いに活かすことができるものといえます。しかし、同時に先の国と地方公共団体の責務は罰則規定のない、努力義務なので、関係者の積極的な参加がなければ、有機農業の発展は進まないともいえます。日本が有機農業の先進国になるためには、声をあげ、行政と連携していく必要があります。