ファクトシート:
地球は水の惑星?それとも水企業の惑星?

第3回世界水フォーラムが、今年3月に琵琶湖水系(京都・大阪・滋賀)で開かれる。そこで多くのNGOが争点と考えているのが水の「民営化」の問題だ。水は本来誰のものでもないはず。にもかかわらず、民営化によって市場で売買される商品となる。ここでは、世界水フォーラムの紹介と水道事業の民営化をめぐる問題について考えてみたい。

■世界水フォーラムとは?
世界水フォーラムとは、国連の会議ではなく、1996年に誕生した世界水会議(WWC:World Water Council)が主催する会議である。97年にマラケシュ(モロッコ)、2000年にハーグ(オランダ)と過去に2回の世界水フォーラムが開かれ、2003年の3月16から23日に日本の京都・大阪・滋賀で3回目が開催される。世界水フォーラムは水問題解決のための会議と銘打っているが、その実、水道事業の民営化を進めるための会議にすぎないのではないかと多くのNGOが懸念をいだいている。

■紛争の原因が水になる
20世紀を石油の世紀と呼ぶならば、21世紀は水の世紀と言えるだろう。私たちが利用できる淡水は、地球上の総水量のたった0.5%以下に過ぎない。しかも、その限られた淡水も人類が驚くべき早さで摂取し、汚染し、枯渇させている。その結果として世界中で10億人以上の人が、清潔で安全な飲み水を得られないとの国連の報告がある。限られた水源を巡って、軍事的な紛争が起こる可能性もあり、水不足が世界を不安定化させる要因となるかもしれない。

■水道事業の民営化の提唱
このように、水問題の解決が現在の世界にとって急務であることは言うまでもない。けれども、世界銀行や国際通貨基金(IMF)、アジア開発銀行などの国際金融機関は、各国政府に対して深刻化する水不足問題の解決策として、水道事業の民営化という政策を提唱した。国際金融機関による途上国の水道事業の民営化プロセスは、債務問題と大きく関係している。莫大な債務を抱える途上国の多くは、国際金融機関の融資がなければ財政が成り立たなくなっている。そんなとき、国際金融機関は、「水道の運用は政府が行うのではなく、より効率的な運用ができる民間に任せるべき」「水道事業の民営化によって財政支出を減らして、それを借金返済にまわすべき」と主張し、水道事業の民営化を融資の条件として途上国に要求しているのである。

■水道事業の民営化の問題点
途上国では、水道事業の民営化に伴い、多国籍企業によって重要な公共サービスが独占されてしまった。水道事業は、一地域全体を独占的な市場としてしまうため、競争原理が働かない。そのため利益を出すことが第一の民間企業は、サービスの向上を怠り、水道料金を値上げした。その結果、水道料金を払うことのできない貧困層には水が供給されなくなってしまった。

本来水は、すべての人間が平等なアクセス(利用できること)を持つもののはずだ。けれども、経済のグローバル化の波に乗って進められている「水道事業の民営化」は、水にアクセスできない多くの人々を生み出した。その皺寄せを最も強く受けているのは、中小規模の農民や貧しい国の人々であり、最も利益を得ているのは多国籍企業である。

生命にとってかけがえのない水が、商品として扱われ、購買力がないという理由だけで貧しい人の手に入らないということを私たちは認めることはできない。水の供給は市場に任せるべきものではなく、民主的な公共事業体によって保証されるべきだ。生きていく上で最低限度の必要を満たすための清潔で安全な水を得ることは、すべての人が享受すべき基本的な人権であるのだから。(文責:二見剛)


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