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          米大統領選を考える  
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      選挙戦は終わり、アメリカ合衆国州国は自信と信念を持ち前に進んでゆくのです。      
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アレはナンだったんだろう?

アメリカの大統領選がこれだけ世界で注目される(注目しなければならない)のは、経済・軍事、そして環境破壊の3つの側面からみて、アメリカ一国の影響力(とゆーか悪影響)が世界一大きいからだ。現在、ブッシュ政権は「イラクの民主化」という名目で兵隊を送り出す一方で、京都議定書のような国際的な規制案の中での米国の責任は無視しまくっている。そんなアメリカの一国至上主義が続くのか、国際協調路線に戻るのか、はたまたまったく予測不能の混沌とした世界になるのか? 04年〜08年度の大統領を決める今回の選挙でアメリカ国民がケリーとブッシュのどちらを支持するのかを、世界が見守ったというわけだ。

今回のエコカル特集では、大統領選挙の中で様々なアクションを繰り広げたアーティスト&スター達や、政治的なキャンペーンを紹介したいと思う。前回の2000年のゴアVSブッシュの大統領選での投票時の不正疑惑や911同時多発テロでのブッシュ大統領の言動を取り上げ、大統領の資質の無さを痛烈に指摘したマイケル・ムーアの映画「華氏911」は日本でも記録的ヒットを飛ばしたが、その他様々な、ビッグでアートなデキゴトを特集した。他人事ではないアメリカ大統領選を、終わった今だからこそ、ゆっくり考えてみたい。





「エコカル」な国、アメリカ

日本に比べてアーティストがやたらアクティブに「社会派」なメッセージを発信し、実際に行動しているアメリカ。前回の大統領選では青年の投票率は42.3%だったが、今回は51.6%にあがった。これもひとつの「エコカル効果」か。
レオナルド・ディカプリオも出演した公共放送「Rock the Vote」のウェブサイトには140万人以上が参加している。俳優のブラッド・ピットはミズーリ州を訪問、母校ミズーリ大学で開かれたケリー氏宣伝映画の上映会に参加した。シャロン・ストーンは、ペンシルベニア州でケリー氏を応援している。トム・ハンクス、ロバート・レッドフォード両氏は2000ドル(約22万円)づつケリー陣営に献金。共和党に転向していたデニス・ホッパーはブッシュ大統領を見限ったらしく、妻と共同で10万ドルをケリー陣営に献金した。リチャード・ギアは「神が絶対的に自分の側についている、と信じる人間は誰であっても信用できない。特にその人物が米大統領である場合は」とブッシュ批判。ウーピー・ゴールドバーグはケリー支援コンサートでブッシュを「陰毛(おいおい)」呼ばわりしてダイエット食品のCMを降ろされた模様。マット・デーモンや「ロスト・イン・トランスレーション」のスカーレット・ヨハンセンらは、反ブッシュ政権キャンペーンのCMに登場しているし、マイケル・J・フォックスもキルスティン・ダンスト(映画「スパイダーマン」ヒロイン役)もベン・アフレックナタリー・ポートマンもケリー支持を公言している。
「ボス」と親しまれているブルース・スプリングスティーンの「Vote For Changeキャンペーン」は反ブッシュ色を全面に出して青年層に投票を呼びかけた。10月1日夜には、大統領選挙戦で反ブッシュを訴える大規模なロックツアーがフィラデルフィアからスタートした。激戦が予想される州をまわるこのツアーは、ブルース・スプリングティーンをはじめ、R.E.M、デイヴ・マシューズ・バンド、パール・ジャム、ディクシー・チックス、シェリル・クロウ、ジャック・ジョンソン、クロスビー、スティルス&ナッシュといったアーティストが参加した豪華な「大統領選挙ツアー」になった。
ブッシュ陣営支持のアーティストやスターも紹介しておこう。アーノルド・シュワルツェネッガー(カリフォルニア州知事)いわく「米国は戻ってきた。本土攻撃から、経済への攻撃から、我々の生き方に対する攻撃から。忍耐強く、指導力あるブッシュ大統領のおかげで」と、大統領の再選を訴えた。ブルース・ウィリスも「ブッシュ親子を尊敬している」と語る熱心な共和党主義者。
 著名人が政治的メッセージを出す意義は何か?ズバリそれは、無関心層の政治参加を促すことだ。一方で、そのカリスマ性、何万人もの熱狂的ファンを容易に動かしてしまう圧倒的な求心力が持つ危険性も忘れてはならない。しかしアーティストが社会性ある活動をすることは、むしろ自然なことと受け止められる国こそ、健全で面白い社会ではなかろうか。


 


【オススメエコカルリンク】

 
■米大統領選挙2004 世界模擬投票キャンペーン http://www.choice21.org/ 
 
日韓のNGOが世界の非米国人に呼びかけ、結果をアメリカ国民に伝えることで、現実の投票に影響することを目指したバーチャル投票キャンペーン。
 
  ■ブッシュ妄言録http://www.fugafuga.com/bushism/ 
 
  2003年1月ぺんぎん書房より発売された本「ブッシュ妄言録〜世界一危険なバカ〜」の元ネタウェブサイト。ブログあり
http://georgebush.exblog.jp/
 
  ■無関心党http://www.hirake.org/mukan/ 
 
  米大統領選とは直接関係ない、政治に無関心な人のためのサイト。

 


PHOTO:シムラユウスケ


なんでブッシュが選ばれる?

今回の選挙ではブッシュと反ブッシュにアメリカの世論が完全に二分された。特にイラク戦争へのYes or No?が問われる選挙として、アーティストやハリウッドスターも両派どちらかに分かれ、激しい応援合戦を繰り広げた。
事前の予想ではブッシュとケリーの得票予想率はほぼ同率だった。スイングステートと呼ばれたペンシルバニア、オハイオ、フロリダの3つの州を中心とした激戦州が勝負の分かれ目になり、3州のうち2州を取ったものが大統領になると言われていた。
選挙終了後の当日夜に開票が始まり、まず両派の支持が強い州の獲得が次々に決まった。キモの3州のうち、ペンシルバニアを僅差でケリーを落とすも、フロリダ・オハイオが両州ともケリー優勢という予想に反して、ブッシュの票が伸びた。オハイオは選挙翌日まで再集計をすべきと民主党が主張していたが、最後はケリーが敗北宣言をし、ブッシュ再選が決まった。

選挙結果を見ると、民主党の青(ブルーステート;ニューイングランド(北東部)、五大湖周辺、西海岸のリベラル地域)に対して、共和党の赤(中西部、南部の保守地域)で くっきりと分断されたアメリカが見える。赤の中には一つとして青い州は 無いほど真っ二つ。前回の選挙に比べて赤い州にが増えている。国際社会の動きを把握し、冷静に判断する知性(青)が、テロへの恐怖による感情(赤)に負けたということか。

http://www.cnn.com/ELECTION/2004/pages/results/electoral.college/

なぜ海外ではこれだけ不人気なブッシュ政権が再選するのだろう?米国民はイラク戦争のようなニュースを見ていないからか?それは違う。やはり強いアメリカを国民が求めており、大統領には強いリーダーシップが必要だと見ているのだろう。911の同時テロ以降、選挙の争点の上位にテロ対策があがり、テロに「来るならコイ!」と言えるリーダーシップを持つブッシュの方が結果として支持を広げているのだ。
第二の理由は、ブッシュ政権の支持層に信仰心厚い米国の大農牧業を主とする中西部、南部農村部がある点だ。米国の人口はNY、ロスアンゼルス、シカゴなどの大都市よりも実は農村の方が多い。伝統的に都市部の民主党系インテリ層を毛嫌いし、キリスト教的倫理観(中絶禁止など)を訴えたブッシュのより強固な地盤となっている。最近のアメリカでは日本人にはイメージしづらいキリスト教的価値観の保守化が際立っていると指摘されていて、キリスト教の宗教指導者が公然とブッシュを支持したりしている。
付け加えるなら、民主党のケリー候補にも問題があった。完全にイラク戦争と反ブッシュというメッセージのみに頼ってしまい、頼みの綱の浮動票をまとめきれなかった。

選挙システムについて、かなりキナ臭い話もある。激戦のフロリダ、オハイオは電子投票機による投票だが、その投票機のメーカー企業はブッシュ政権と縁が深いティーボルト社だ。この投票機は記録が残らず、不正が行われてもそれを立証することができない。選挙選の鍵となったフロリダ、オハイオの2州では選挙当日のテレビで「なぜこれほど民主党が強い地域(郡)でもブッシュが支持を集めているのか不思議だ」とキャスターが報道した。他の州では出口調査と実際の結果が合致しているのに、この両州だけは出口調査の結果よりも実際の選挙結果の方がはるかにブッシュ票が多いという報道もされており、ウサン臭いことこの上ない。果たして激戦の2州で不正が行われたのか、真相が暴かれるのを祈るばかりだ。

 


PHOTO:シムラユウスケ



若者よ、選挙へ行こう

今回のエコカル特集はブッシュが悪いか、ケリーがいいか、という話ではない。アメリカではスーパースターが政治参加しているらしい、ということでヤジウマ根性も手伝って、エコカル的な面から色々調べてみたというわけだ。

公共選挙番組「Rock the Vote」をはじめとするアメリカの「若者よ、選挙へ行こう」という著名人の活動の積極性はスゴイの一言だ。『華氏911』効果も加わって、今回の25歳以下の若者の投票率は前回の42.3%から51.6%を大きく伸び、めでたく過半数を超えた。不正疑惑、差別的な選挙制度の中で、それでも二人に一人は投票をしたことは、マイケル・ムーアの言うところの「勝ったのは青年!」と言えるかもしれない。我らが日本の若者はと言えば、2000年の衆議院選挙で35.64%、2004年は32.4%、おいおい下がってどーする。ちなみに60代は77.9%だ。しかしエコカルな国、アメリカで、これだけメジャーなアーティストを総動員しても、やっと投票率は5割。日本の無関心ぶりは、むしろ当然であって、コレを5割以上にあげようとしたら、どんなスーパースターのカリスマが必要になるやら。

しかしもう一つ見落としてはいけないことがある。ブルース・スプリングスティーンもレオナルド・ディカプリオも、人気に乗じて一方的にブッシュにNo!を言っているわけではない。自分がなぜコイツを選ぶのか、もしくは選ばないのか、その理由を伝え、「君は自分で選んでる?」と呼びかけている。言い方が過激で、一方的に聞こえることも無くは無いけどね。要は、自分の目で選び、若者よ選挙に行こう!というとこだ。

 




 



米大統領選挙2004エコカル情報
【セレブが着ていたKERRY-TShirt】
 
 
出典:http://www.concertsforkerry.org/


今回の大統領選挙では、ファッション界でも変化があった。ロサンゼルスで今もっとも人気のネットショッピングサイトShopIntuition.com が販売していたケリーTシャツが、スターの間で大人気だった。Tシャツの種類は3種類あり、売上金はケリーの選挙資金の一部になる。中でも『KERRY is my homeboy』のTシャツがセレブの中で最も人気で、ジェニファー・アニストンデミ・ムーア、メラニン・グリフィスらがプライベートで着ている姿もキャッチされている。
ハリウッドは50年代にジョセフ・マッカーシー上院議員によるアカ狩りで共産党主義思想を持つと疑われた映画人たちが、ハリウッドから追放され、多くの才能が失われた暗い過去がある。そのためハリウッド関係者には伝統的に民主党支持者が多く、当然ながら今回の選挙でも多くのスターが民主党の「ケリー支持」を表明していた。


PHOTO:シムラユウスケ


■Rock Against Bush Volume II
www.fatwreck.com/junk/rab2.html  
28のアクティブなバンドが奏でるアンチ・ブッシュサイト。CDは6ドル。必見!  
   
■HIP HOP SUMMIT ACTION NETWORK   
http://www.hsan.org  
ラッセル・シモンズが主催する団体。ボストンの民主党大会にあわせてヒップホップサミットを開催、青年有権者に投票を呼びかけた。  
   
■Bands Against Bush    
http://www.bandsagainstbush.org    
バンドマンによる国際的なアンチ・ブッシュ団体。    
   
■Concerts For Kerry   
http://www.concertsforkerry.org/  
ケリー陣営の大統領選挙キャンペーンの資金調達のためのコンサートを企画した団体。  
   
■マイケル・ムーア「華氏911」    
http://www.michaelmoorejapan.com/  
ごぞんじアンチ・ブッシュドキュメンタリー映画。選挙前にDVDリリースされ、さらに全米でテレビ放映までされた。  
   
■Punkvoter    
http://www.punkvoter.com/  
マイケル・ムーアが設立した組織で、パンクファン向けアンチ・ブッシュサイト。漫画も充実。  


【青年の投票率を上げるキャンペーンや団体】
■CHOOSE OR LOOSE 
http://www.mtv.com/chooseorlose/
18歳から29歳までの青年2000万人に「選挙に行こう」と呼びかけたキャンペーン。結果2100万人を超える青年が投票した。
■ CITIZEN CHANGE  
http://www.citizenchange.com/
P・ディディが主宰する若者向け団体。合言葉は「Vote or Die」。
■ Rock the vote  
http://www.rockthevote.com/
青年の投票率を上げるための公共放送の公式ウェブサイト。日本もこーゆーの作れ。




【記事アレコレ】  
■エミネム(新曲「モッシュ」11/15発売)  
 
http://www.sanspo.com/geino/top/gt200410/gt2004102606.html
http://www.barks.jp/news/?id=1000003122 
 
  出典:
http://www.barks.jp/news/?id=1000003122
 
■ブルーススプリングスティーン(Vote for change)
   
http://www.bounce.com/news/daily.php/4022/headlineclick 
   
   
■メアリー・J、ミッシー  
 
http://www.barks.jp/news/?id=1000001955&m=hiphop  
  出典:
http://www.barks.jp/news/?id=
1000001955&m=hiphop
■デイブ グロウル(foo fighters,probot,ex.nirvana)
   
http://www.foofighters.com/archives/timeline.php    
   
■ディキシーチックス  
出典:
http://www.geocities.jp/dixiechicksjapan/
 
http://www.geocities.jp/dixiechicksjapan/  
 
98年発売の1stアルバムが1100万枚もの売り上げを記録し、カントリーミューッジック界のトップに立つ女性三人組バンド。出身地は皮肉にもブッシュ大統領とおなじテキサス州。
イラク戦争開戦直前からブッシュ大統領に対する批判を公にしていた彼女達は、保守的なカントリーミュージック界から部外者扱いされた。更にラジオ局のボイコット、脅迫などのトラブルも発生。しかし、「ブッシュは個人的な抗争や、 オイル産業にいる友達の利益のために私たちに戦争をさせているのよ!」と積極的に発言を続け、vote for changeツアーにも参加。反ブッシュ活動を続行した。

 
   
■グリーンデイ    
   
ビリー・ジョー(VO)とマイク・ダーント(Ba)はブッシュ再選後のアメリカは”アナーキー”状態になると語っている。 ビリー・ジョーは「ブッシュが居座ったから、暴動が起きるかもね。手に負えない状態になる」。マイク・ダートンは「クソったれ!」と。
   
■ビリー・コーガン    
   
元スマッシング・パンプキンズのビリー・コーガンが投票を拒否。彼は「投票しない。ファンは怒るかもしれないが、選挙のプロセスが問題だらけだ」と語ったとワールド・エンターテイメント・ニュースは伝える。



PHOTO:シムラユウスケ



【参考】アメリカ大統領選挙のしくみ

アメリカ大統領選の仕組みは、日本の選挙制度とは少し変わってる。「選挙人制度」と呼ばれ、各州毎に人口比で割り当てられた合計538人の選挙人を投票で選び、その選挙人が各党の大統領候補に投票するという、間接的な制度だ。

州毎の選挙人の数は、各州の人口に従ってカリフォルニア55人、テキサス33人、ニューヨーク31人などの順で多くなっている。ケリー(民主党)、ブッシュ(共和党)の各州毎の投票数が多い方が、その州の選挙人を総取りするオールオアナッシング方式。
もともと東北部や五大湖周辺、西海岸ではリベラル色が強く、民主党の地盤であり、党の色を表してブルーステートと呼ぶ。反対に大平原の広がる中西部や南部は伝統的で保守的な共和党の地盤で、レッドステートとなっている。

レッドステート、ブルーステートでは、投票前から世論調査で結果はすでに決まっている州が多い。今回の大統領選は両者が同数に割れていて、そのどちらでもないスィングステート(振り子のように動向が揺れる州)の中で選挙人の人数が多い州が勝負を握るとされていた。特に東海岸のペンシルバニア(選挙人21)、五大湖近くのオハイオ(20)、南部のフロリダ(27)の3州が激戦州で、この3州をどれだけ取れるかで勝負は決まると言われていた。

選挙人制度にはいくつか問題点が指摘されている。全米としては得票数(支持した国民の数)が多くても、選挙人が少なくて大統領になれないという矛盾した場合がありえること。前回2000年のゴアVSブッシュの選挙戦が、まさにコレだった。投票システムが州によって違っていて、しかも記録が残らない電子投票機を使っている州が多いことも問題だ。前回のフロリダのように何かと混乱や疑惑が付きまとう。さらに、選挙人制度では投票者は事前に選挙するために選挙人登録を行う必要がある。日本のように葉書が来てそれを持って投票所に行くという簡単な方法ではなく、マイノリティーや低所得者層が投票しにくい仕組みとなっている。



(Yama・Ryo・Hasshi・Pako)



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