エネルギー基本計画、民意を無視した閣議決定に抗議 緊急記者会見

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7/3に第5次エネルギー基本計画が閣議決定しました。

A SEED JAPANも所属するeシフトでは、策定プロセスが開始された当初から、プロセスや内容の是正などを求めてきましたが、経済産業省は、公聴会の開催など、市民の意見を反映するような努力は行われていません。
本来であれば、パブリック・コメントの結果を発表・分析、それを踏まえた公開の審議を行うべきではないでしょうか。このような手続きをふまずに閣議決定を行うことは、パブリック・コメントの制度の形骸化にほかなりません。
また、基本計画案の内容についても、多くの誤りやミスリーディングな記述が繰り返され、原発・石炭を延命させることを誘導するものとなっています。

こうした状況に抗議するため、7/3、参議院議員会館でNGOや専門家が緊急記者会見を開きました。

動画はこちらから。→JOURNAL ASIA

 

記者会見の発言者と内容

「市民の意見を無視した法案策定プロセスへの疑問-本計画に関する公聴会開催を要望」

西島香織/A SEED JAPAN事務局長

経産省は本計画の見直しの過程で「エネルギー政策に関する『意見箱』」を設置し、パブリックコメントを募集したが、ここに寄せられた意見がどのように議論に反映されたのかを含め、本計画案公開後に、本計画案に関して大臣から有権者に対する説明がなされることも、有権者が参加して公開で議論できる場も設けられることもなかった。このままでは、エネ基の中でも掲げている「信頼関係の構築」はおろか、閣議決定も許されない。

詳細はウェブサイトをご覧下さい。第5次エネ基閣議決定に抗議+公聴会開催を求めます

 「エネルギー基本計画のファクトチェック~フェイクからファクトベースのエネルギー政策へ~」

1.満田夏花氏/国際環境NGO FoE Japan 事務局長

福島原発事故に関する認識のなさ等に言及。「対応が必要な事項として「原子力損害賠償、除染・中間貯蔵施設事業、廃炉・汚染水対策や風評被害対策についての対応が必要」としているが、深刻な被害の認識としては極めて不十分。原発事故による大量の放射性物質の拡散と汚染、人々の被ばく、ふるさとの喪失や変貌、分断という深刻な被害が欠如している。東京電力は賠償に関するADRの仲裁案を拒否し続け、復興庁は原発事故の避難者の置かれている状況把握をしようとしない。原発事故の責任を負うべき国・東京電力が原発事故被害に向き合っていないことに起因して多くの問題が発生している。さらに、環境省は大量の除染土を公共事業に使おうとしているなど、意図的な汚染の拡散も懸念される。」

詳細はFoEJapanウェブサイトをご覧下さい。第5次エネルギー基本計画案に意見

2.松久保肇氏/原子力資料情報室事務局長

「福島原発事故の避難者を2.4万人と低く見積もっており県の発表の半数以下となっている」、「米国の原発最大手でさえ、原発は高コストのため新設はしないと話している」等について言及。問題の矮小化、願望が先行しているため政策が非常に硬直的であり実態に即していない事、そもそもの課題認識が欠如している点などをあげ、批判されました。

3.竹村英明氏/市民電力連絡会理事長

主に電力コストについて、経産省の認識との差異を言及。原発のコストは、経産省の試算である「10.1円/kWh以上」に、事故リスク対応費用等の社会的費用を勘案すると2倍の20円/kWhを超えると試算。

再エネの普及に伴うFIT賦課金は国民負担となるという点については、「賦課金は永遠に続くものではないと仮定すると、今後賦課金制度が2032年に終了した場合でも(賦課金終了まで20年かかるため)2052年までの期間、国民負担は80兆円となる。しかし一方で、再エネ普及に伴い化石燃料の輸入が削減し、それによる電気代削減額が150兆円と試算される。80兆円の負担で150兆円の電気代を減らすことは、本当に国民の負担だろうか?」と指摘しました。

4.松原弘直氏/認定NPO法人 環境エネルギー政策研究所 主席研究員

日本の再生可能エネルギーのポテンシャルは非常に高いことを指摘。

「2016年度の日本の全発電量は約1兆kWhであるのに対し、風力発電だけで3.8兆kWhのポテンシャルがあるという試算もある(環境省)。それにも関わらず、政府の方針である「2030年エネルギーミックス(長期エネルギー需給見通)」では、風力発電は全電力の1.7%(1000万kW)に抑え込まれている。太陽光に関しても、すでに6%近くに達しているのに7%目標になっているのは、あまりにも過少に見積もりすぎだ。」

5.桃井貴子/気候ネットワーク東京事務所長

石炭火力の問題について言及。「世界では石炭火力に対する投資撤退(ダイベストメント)が進む中、日本のみが逆行しているのは国家の経済的にも外交上でも不利な立場に立たされる要因。今回のエネルギー基本計画は従来の原発・石炭を温存させ、これら旧来型の事業にも多額の予算が投じられる基本政策として既得権に強く配慮した政策となった。これにより、日本は持続可能な社会づくりを放棄したばかりか、国際交渉力や国際的なアドバンテージをみすみす手放すことになったと言える。」

詳しくはウェブサイトへ 原発・石炭回帰の「第5次エネルギー基本計画」民意無視の閣議決定に対する抗議声明

6.明日香壽川氏/東北大学環境科学研究科 教授

明日香さんは、今回発表された第5次エネルギー基本計画のファクトチェックを行うため、詳細なリストを作成しています。国民をミスリードするような記述、全くの嘘、関係のない記述等がないか精査し、今後発表していく予定です。

記者会見についての問い合わせ

eシフト(脱原発・新しいエネルギー政策を実現する会)
事務局 国際環境NGO FoE Japan
TEL: 03-6909-5983/FAX: 03-6909-5986

2018-07-04