人の心に訴えるプレゼンテーションをするコツは、いかに聞き手の目に訴えるかだといわれています。
また、人が1日に受け取るすべての情報のうち、目から入る情報は約83%ともいわれています。ですから、プレゼンテーションをする場合にも「視覚に訴える伝え方」というのが、大切な技術になってきます。
ここでは伝え方について、道具編とボディーランゲージ編に分けて説明します。
プレゼンテーションに有効な道具としては、模造紙・黒板・ホワイトボード・OHP・フリップチャート(あらかじめ伝えたいことを複数の紙に書いておき、めくれるようにしてあるもの)・スライド・ビデオ・写真などがあります。また、最近では、パワーポイントなどのプレゼンテーション専用ソフトを道具として用いる場合もあります。これらの道具を使うときに注意したいのが、「Show – See – Speakの法則」です。
これは「まず画面を示す(Show)、次に聞き手を見る(See)、そして話し始める(Speak)」ということです。
大学の講義などでよく見かけることですが、黒板に図や数式を書いては、その前に立ちはだかり、聞き手もかえり見ずに黒板に向かって話し始めてしまう先生方もいます。これは、「Show – See – Speakの法則」を守れていない、よくないプレゼンテーションです。
前に視覚物があると、聞き手は顔を上げて見てくれますので、アイコンタクト(相手の目を見ること)することができます。話すときは必ず聞き手を見てください。黒板を使う際に、文字を書きながら話したり、聞き手に背を向けたりすることは厳禁です。あらかじめ板書しておくなど工夫しましょう。
また、視覚物で何を表現するのかも大切なポイントです。伝えたい内容をわかりやすくまとめたキーワードや資料・写真・データなどを出すことが望ましいです。その時、具体的な数字を示すとか、数字をグラフ化(円グラフ・棒グラフ・折れ線グラフなど)にするといった工夫をすると、大変わかりやすくなり説得力も増します。
ところで、視覚物を使うことにより、プレゼンテーションをすることの負担が少なくなることもあります。道具を使ってキーワードを出し、それらに説明を加えるというプレゼンテーションは、台本丸暗記のプレゼンテーションよりずっと自分らしい言葉で話せるものです。ただし、道具に頼りすぎると、情報量が多くなりすぎて聞き手が混乱してしまいます。それに、突然道具が使えなくなるというハプニングに対応できなくなります。その場に応じた道具の使い方をマスターして、無理なく効果的なプレゼンテーションができるよう練習してみましょう。
ボディランゲージとは、態度や顔付きなど体のしぐさで、効果的に伝えたいことを表現することを言います。ここでは4つのポイントに分けて説明します。
声には「大きさ」・「調子」・「高低」・「音色でメリハリをつけること」があります。
まず「大きさ」ですが、聞き手全体に聞こえるように話すのは当然のことです。そのためには、一番後ろの人に話しかけるようにすると良いでしょう。そうすれば自然に適切な大きさの声が出ますし、大きな声は自信にもつながります。 また、声が一本調子のプレゼンテーションでは聞き手は眠くなってしまいます。重要な事を話す時には迫力のある大きな声で話し、またある時にはささやくように話すなど、変化を付けると非常にインパクトがあります。 ほかにも、声だけで感情を表現したり、間をとって話すようにしたりするという具合に、いろいろな声の使い方を試して見ることをお奨めします。
ボディランゲージの中でも一番重要なのは視線、つまりアイコンタクトです。 「目は口ほどにものをいう」というくらい、目には話し手の自信や焦りなどが表われるものです。せっかくいい内容の話をしていても、目に力強さを感じられなければ説得力が欠けてしまいます。 そこで聞き手一人ひとりの目を見て、丁寧に話すようにしましょう。コツは、一人ずつ後ろから右→左→右→左というようにジグザグに見て話しかけていくようにすればよいでしょう。これを“ジグザグ法”と言います。中には批判的な態度の人がいて、話す時に緊張してしまうこともありますが、そんなときは自分の話を好意的に聞いてくれそうな人にアイコンタクトをとりながら話し出すと、慣れてきた時に批判的な人に向けても自信をもって話せるようになります。 人の目を見て話すのはなかなか大変なことです。相手の目を自然な視線で見つめられるようにするには、にらめっこなどのような人の目を見続ける練習が効果的です。どうしても相手の目を見るのが苦手な人は、首のあたりに焦点を合わせるのも一つの手です。
ジェスチャーは難しいものだと思いがちですが、簡単にできます。 例えば「○○会の会員はどんどん増えています」と言う時、両手を翼のように広げるジェスチャーをしたり、逆に「私たちの活動の成果でこの町のごみの量が減ってきています」と言う時、アコーディオンを弾く人のように両手を縮めるジェスチャーをしたらどうでしょうか? 聞き手は事の大きさをイメージできるでしょう。他にも「海外に行ってきました」と言いながら右手を大きく伸ばして遠くを指す手つきとすれば、遠くに行ってきたんだなあと思ってもらえるでしょう。 ジェスチャーはできるだけ大きな動作でしましょう。たとえば、大切なポイントを強調する時に体を前に一歩踏み出すような前後の動きや、顔の表情で喜怒哀楽を表現するなどの動作も効果的です。
外見によって人柄が判断される例はたくさんあります。外見のなかでも服装は改善することが可能なものです。プレゼンテーションをする際は必ずスーツを着用しなければいけない、ということはありませんが、必要に応じて、TPOに合わせた服装をしましょう。あまりに汚らしい格好をするのは印象を悪くします 時と場合によりますが、インパクトのあるプレゼンテーションをするために、変わった衣装を身につけたりすると、パフォーマンスとして楽しめるかもしれません。 新品のものやあまり着慣れないものを身に付けると、かえって緊張することがあるので、できるだけ着慣れているものを選ぶことをお奨めします。
以上が、伝え方(Presentation skills)のポイントです。