“ASJと金融” のキホン~エコ貯金プロジェクトから学ぶもの~(その2)

話す人)

大村 哲史

A SEED JAPAN 理事 株式会社 YUIDEA CSR担当

(聴く人)

鈴嶋克太

A SEED JAPAN事務局 ESGウォッチプロジェクト担当

目次

これからの金融商品のキホン

大村:代表的な金融商品は「預金」「債権」「投資信託」「株式」など。預貯金に代わる金融商品として注目されているのが「投資信託」ですね。自分が死ぬまでに必要なお金を資産形成しなくちゃいけないのに、預貯金金利は低い。物価やサービスの価格もどうなるかわからない。預貯金はさっき言ったATMとかを除くと元本割れはありませんが、他の金融商品はリスクがありますよね。いわゆる、リスクが低くていっぱい戻ってくる、という金融商品は存在しません。あったら、それは詐欺です。楽して儲かるものは絶対にないです。

Aさん:投資、というと怖い感じがします。株が下がって大損!みたいな。

(リスク表のスライド)

リスク、というのは「お金の振れ幅」のようなものです。預貯金なら、同じ金額が維持されるのでリスクはゼロです。でも、株式だったら価格変動があるので100万だったものが10万になっちゃうかもしれないし、逆に200万に上がることもあります。株式はハイリスク、ハイリターン。こういった金融商品の真ん中にあるのが「投資信託」です。

「投資信託」は様々な投資家などから集めた資金を専門家が国内外の株や債券・不動産などに投資する金融商品です。

例えば、大企業の株を個人で買おう、とするでしょ?優良株だと一株3万円、とかなんですよね。でも買うには100株単位でないと買えない。つまり、300万円のお金がないと最小単位でも買えないのです。でも、投資信託の商品では、みんなから少しずつお金を集めて買うことができる。1万円の投資で、大企業の優良株も間接的に買うことができるということです。

信託銀行のような機関投資家たちはさまざまな銘柄に分散して投資します。投資の諺に「卵は一つのカゴに盛るな」というのがあります。資金を一つのところに集めていて、そのカゴが落ちて、卵が全部割れちゃったら困るでしょ?

投資信託は株式に比べて低額で行え、投資のプロに運用を任せられるというのが特徴なのです。

もちろん、この金融商品にはプロの力がかかっているのですから、手数料がかかる、ということにも着目しておく必要があります。

ESGと金融のキホン

大村:ここからはそんな投資の世界で重要なESGの話に移ります。皆さんはESGは何だか知ってますよね。

Cさん:環境(E: Environment)、社会(S: Social)、ガバナンス(G: Governance)の英語の頭文字をとってESGです。企業の長期的な成長や今後の経営に必要な観点問われています。

大村さん:そうですね。では、いつから普及したかは知ってますか?

Aさん:おー、いつからだろう。SDGsが2015年からなのでその頃でしょうか?

大村さん:実は、2006年のPRI(*2責任投資原則)ができたときからなのです。

PRIは機関投資家の意思決定などに投資先企業のESG要素を反映させるための考え方を示しています。これは、当時の国連事務総長コフィー・アナンらが各国政府、国際機関、民間投資家と議論を重ねて、報告書(*3)という形で出されたものです。

Bさん:SDGsよりだいぶ前なんですね!

(*2)PRI(責任投資原則):機関投資家が投資の意思決定プロセスや株主行動において、ESG課題(環境、社会、企業統治)を考慮することを求めた6つの投資原則とその前文から成る。

(*3)コフィー・アナンらの報告書:2004年に「Who Cares Wins(思いやりのある者が勝利する)」と題し、ESG要素を投資プロセスに組み込むよう、主要投資機関CEOに協力をよびかけたことを報告したもの。

大村:最近はESGという言葉が企業の経営や戦略と組合せされて使われることが増えたけど、元々はESG投資という金融用語からスタートしています。

ちなみに、PRIの署名機関は発足以来増加を続けていて2020年には世界3470機関、運用総資産額は約100兆ドルになったと言われています。

Cさん:日本ではいつ頃から普及したのでしょうか?

大村:2017年「世界最大級のクジラ」と呼ばれる機関投資家がESG指数、という言葉を出しました。これで結構世の中は揺れたんですよ。それは「GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)」で、国民の年金を預かっている巨大機関がESGを使ったんだから、もう、「我々の年金を貯めてくれているんだよね?ちゃんと我々の年金を運用してくれているの?」という重大な関心事になりました。それほど大きな組織がESGを意識した、というのが2017年で、これはインパクトがありました。

Aさん:じゃあ私たちのお金もすでにESG投資という形で活用されていると言えるのですね。

大村さん:そうですね。とはいえ世界の広がりに比べると日本国内のESG投資の規模はまだまだ。2020年では世界全体のESG投資の8%程度と算出されています。

Bさん:ESGの観点に立つ投資というと具体的にはどんなものでしょう?

大村:ESGの7つの手法のうち、ESGウォッチプロジェクトは「ネガティブ除外スクリーニング」が多いと思います。「ネガティブなことをやっている企業が投資先に入っているけど、それっていいんですか?」と訴えていくこと、NPOはこっちが結構多いかと思います。もちろん、サスティナビリティテーマ型投資という「こういうことをやってほしいからこのファンドにお金を出す」というのも一つのESG投資だと思います。

投資信託というのは、30年くらい預けて価値が出る、というか1、2ヶ月でお金が上がったり下がったりしているのを一喜一憂しながら見ると疲れちゃうでしょ。投資信託は数十年かけて資産形成していく金融商品なので、長期的な利益を目指すESG投資とも相性が良い、とも言えます。

“君たちのこれから”のキホン

大村:ここにもし「スーパーESGファンド」と言うのがあるとします。それって、一般の信託投資の商品と比べて、手数料はどうなると思います?

Aさん:やっぱり、ESGの方が高い?

大村:その通りです。儲かる銘柄だけに投資するより、ESGを考えて投資する方がはるかに大変なのです。皆さんは将来に向けて、お金を増やさなければならないのに、あんまり儲からない商品に投資するわけにもいかない。ここにジレンマがあります。

じゃ、皆さんのこれからの時代について、もっと考えていかないといけないと思うのですが、皆さんの親世代の人々は預金預けているだけでよかったのに、もう、年金はどうなるかわからない、資産形成しなさい、投資しなさい、と学校でも教えられる時代になっていますよね。もう一つ、ポイントだと思うのは、「成年年齢の引き下げ」です。18歳からはなんでもあり、になっています。最近、マネートラブルも多くなっています。詐欺商品を買わされて、クーリングオフの期間に解約しないと何にもできなくなったりします。今までは20歳以上の責任だったのが18、19歳が狙われていて、詐欺の受け子になる、というようなリスクも出てきました。もう、投資もさせられる、成年年齢も引き下げられる、マネートラブルに巻き込まれるかも知れない。

だからこそESGを考えてもらいたいのです。

銀行にお金を預けていたら元本割れはない、とさっき言いました。他の金融商品だと元本割れするかもしれない。でも、ESGウォッチプロジェクトで提唱しているように、「もう一つの元本割れ」があるのです。アースオーバシュートデー(*4)もありますけど、資源枯渇の問題があって、地球も元本割れしています。

だから、ESG投資をする金融商品に投資したい、でも…。そこを考えていかないといけないのです。

(*4)アースオーバシュートデー:地球が1年間に生み出す生物資源を、年初から数えて人類が使い果たしてしまう日を示す「アースオーバーシュートデー」。2023年は8月2日にその日を迎えました。

大村:僕は皆さんに変に「専門家ヅラ」しないで欲しいのです。専門家にはなって欲しいけど、頭でっかちになって企業に対して文句を言うのではなく、この現状自体に素直に怒って欲しいのです。「無理やり投資をさせられる、将来に対して地球も無くなっちゃうかもしれない。この現実をおじさんおばさん達って、考えたことあるの?30年後に気候変動で苦労しているかもしれないし、少子高齢化で自分のお金も失っているかもしれない。」と。

政府与党って、年配の人のことばかり気にしてませんかね。若者のこと、地球のことを考えてくれていないと思いませんか。我々が国に対して声を上げる必要があると思うし、市民啓発していかないといけないと思うのです。
これって皆さんも皆さんの友達も、やるべきじゃない?「うちらはお金も無くなるし、住むところもなくなるかもしれない」と心を一つにして市民啓発して欲しいと思います。

メガバンクがTikTokを利用する時代です。若い人たちがESGインフルエンサーになって投資の運用会社に自分たちの言葉で伝えていってほしい、と思います。

ESGウォッチはとても大事です。一緒に頑張って行きましょう!

A、B、C:ありがとうございました。

大村 哲史
A SEED JAPAN 理事 株式会社 YUIDEA CSR担当

本記事は独立行政法人環境再生保全機構 地球環境基金の助成により作成されました。

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まゆっち

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