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環境NGOで働く!
 
僕がA SEED JAPAN(以下ASJ)に入って一年、何もわからない頃から支えてくれた人の一人が今回のインタビュイー、ASJ事務局長、鈴木亮でした。今回はそんな感謝の意味も込めて彼の「働き方、生き方」についてお話を伺ってきました。

【鈴木亮さん】
A SEED JAPAN事務局長(2003年3月当時)。小さい頃から環境に関心を持ち、環境問題を学ぶために留学。帰国後ASJに関わり、ボランティアを経て事務局長に。2003年3月で事務局長を退職、2003年6月現在はASJには理事として関わりながら、いくつかのNGOにて活動を続けている)

 
 

■飼育委員−感じたこと、したこと

小学校3年から6年まで4年間飼育委員をしていて、ウサギとコイと鶏の世話をしていた。その頃の世話の全てに「リサイクル」の考え方があった。八百屋さんで野菜の切れっ端を、パン屋さんでパンの耳をもらい、フンは土に返す。エコロジカルな循環を鎌倉の町中で感じることができた。

動物の世話をすることの楽しさやつらさを学ぶうちに、今の社会の人と自然の不自然な関係に違和感を覚えるようになったという。リサイクルで「何でも活かそうし、実際に活かしている」用務員さんと過ごす放課後の時間と、「モノを使い、壊し、直そうとしない」友達との教室での時間の違いがあまりにも大きかった。

■大学−思ったこと、思うこと

大学進学を考える頃、環境問題を学びたいと思うようになっていた。しかし90年当時の日本では「環境〜学部、科」というものがなかった。当時ちょうど、政治的に「環境立国」と呼ばれていたニュージーランドで大学ができた。できたばかりの大学の環境学科を受けることに決めたという。

大学では環境の勉強の他に道教を勉強した。そうするうちに、自分のしたいことが固まりはじめた。「自分のしたいことは社会貢献や金持ちになることではない。ただ楽にぼけーっと、自由で囚われない生き方がしたい」と思うようになった。大事なことは「自由」。それは、「自分の感情までも含めて何事も自分で選んでいる」ということ、「生まれたことに腹を立てない生き方」と言う。

■仕事−してきたこと、したいこと

「企業は元々選択肢になかったね」と言う。その理由もまた小学校に遡る。人と自然の不自然な関係に敏感だったため、小学校のころから競争社会で生きる人たちに違和感を覚えていたのだろう。また「ブラックジャック」の中にNGOの話が出てきたり、「ドラえもん」の中で絶滅危惧種を保護する話が出てきたりとマンガにも影響されたという。実際ニュージーランドでもグリーンピース、鳥保護センターやリサイクルセンターを見に行くなど積極的に活動したという。

帰国後「20代はお金より経験を」と思ってNGOを探していく中でASJに出会った。それから昼はASJ、夜はバイトという生活が始まった。活動の中で編集から海外研修、財団申請まで様々なノウハウを身につけ、経験・自信・人脈を得た。

疾風怒濤の20代を終え、これからの20年間はもう少し専門的な活動をしたいと思うようになったという。亮さんにとって最も関心のある分野は人口問題だった。しかし未だ日本には広い問題意識を持って人口問題を考えるNGOは見あたらない。ならば作るしかない、という結論に至った。「まずはゴールありき」という活動を貫いてきた亮さんらしく「ぼくが死ぬ 2070年頃までのビジョンが欲しい。そのゴールを作るために考え、行動するNGOを作っていきたい」という。

■活動の源−感じ、考え、動き出す

海外のNGOと語り合う中で日本の責任を感じた。責任の大きさに比して実行力の無さを痛感してきた。それでも5年間続けてこられたのは使命感と自分の性格だという。

日本は世界中から資源を持ってきて生活しているのにそれに対する自覚がない、市民社会が弱い、ということに危機感を抱くと同時に自分の使命感を感じる。

また、そうした使命感とは別 に、NGOという場所の居心地の良さも活動の源であるという。NGOで働くことは「自分が自分をどう使うかということ」という。そして「それはイメージしやすいこと」だともいう。自分の人生の持ち時間、お金、能力を考え、それ以上のことは望まない。「なるべく買わず、稼がない生き方」を選んでいるので時間はたくさん持っている。怠け癖のある分、自分の時間はたくさんある。それで得られないものもたくさんあるけど、それをうらやましいとも思わない。

使命感とある程度の息抜き、それがないとNGOで働き続けることはなかなか難しいのではないかという。「〜がだいっ嫌い!!」という思いで止まってしまう人と常に思いを共有することには限界がある。出会いの中で「現実にうんざりしてNGO活動をはじめ、理想に幻滅してNGO活動から離れていく」、そんなサイクルに巻き込まれてしまう人の姿を見てきたのかもしれない。

ボランティアとは「自発的社会貢献である」と同時に「一生かけて懲りたい趣味の一つ」とも言う。怠け癖と使命感、趣味と社会貢献、一見両立不能な言葉が一人の人間の中に混ざり合っている。僕自身、亮さんの近くで活動していて彼のする様々な活動が、小学校の頃体で覚えた感覚と大学で頭で考えた理想をつなぎ合わせているように感じる。

Put Books on the Table, Take an Action in the World!

2003年3月 聞き手・文:高木佑輔