■まっすぐ、迷い道
大場さんは、大学在学中から学生自治会で精力的に活動。卒業研究では、ソフト・エネルギーをテーマに選んでおり、当時から代替エネルギーには強い関心を持っていた。
卒業後、自給自足の農業経験を経て、廃棄物とソフトエネルギーのコンサルタント会社に就職。ゴミ発電・ゴミコージェネレーションなどを手がける。その間、「分散型エネルギー研究会」に参加。中央一極集中型のエネルギー供給構造を地域に分散するべく、活動を続ける。
7年間の会社勤務の後、研究会のメンバーと共に、「バイアブル・テクノロジー」に転職。資源・エネルギーの効率的な利用、太陽光発電、風力発電などの生産方法、システム設計などのコンサルティング会社で、太陽光発電、風力発電などに携わり、同社から分社化・独立する形で「森のエネルギー研究所」を設立、代表となる。
■孫子(まごこ)に持続可能な社会を
森のエネルギー研究所の基本姿勢(※2)になっているものに「四方よし」という言葉があり、「相手よし」「自分よし」「社会よし」「孫子よし」のことだ。
「相手よし」「自分よし」というのは、ビジネスの世界でよく言われる「WIN-WIN or No
deal」ということ。大場さんには、長く付き合っているお客さんが多いが、その秘訣は、波長の合う人、思いの合う人と、お互いに成長できる関係を作っているからだという。
「孫子よし」というのは、世代間の気配りで、私たちは孫子の世代にプレゼントを残すくらいでないといけない、と語る。
持続可能な社会を目指そうとするとき、「バックキャスティング」(未来から今を見る)という考え方が役に立つという。大場さんの現在の活動の根底には、こうした長期的な視野があるのだ。
森からはエネルギーも採れる上、生活に役立つ様々な物質も採れる。大場さんは今の活動によって、現在と目指す未来との橋渡し役になりたいと考えている。そして、今こそ私たちは「これからどうしたいのか」を話し合わなければならない、と語る。
■これから就職しようとする人へ
これから進む道を考える時に大事なことは、大好きなことをすること。そして、特にこれから就職活動をする学生のみなさんには「私はこれをやった」と言えるものを持っていて欲しい。なぜなら、自分という人間がどんな人間で、何が本当に好きなのか、何かをやり遂げる中でわかるからだ、と大場さんは語る。
大場さんも、試行錯誤しながらも、「何とかなる」と思ってやっていく中で、だんだん自分の道が絞り込まれてきた、という。もちろん、課題は尽きないが、周りの方が心配するくらいで、本人は動いていれば何とかなる、と乗り切ってきた。
大場さんにお話を伺って、静かな語り口と柔和な笑顔の中にも、固い信念と熱い思いが感じられた。真に世の中を変革していく人というのは、そういうものかもしれない、と感じた。
※1 木質バイオマス
木質バイオマスは、木由来のエネルギー資源で、主に木質ペレットや木質チップ、バイオガスがある。木質バイオマスの先進国スウェーデンでは、総エネルギーの20%を占めている。
※2 森のエネルギー研究所の基本姿勢
詳しくは、森のエネルギー研究所ホームページを参照。
http://www.mori-energy.jp/
(聞き手:のぶ、もん 文責:のぶ 取材日2003/6/17)
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