2001年2月頃、新潟県巻町のNPO法人「里のじむしょ」理事のメンバーから麻の実入りビールをつくらないかという誘いを受けた。巻町と同じ西蒲原郡にある小さな地ビール会社に企画を持ち込んでみると「面
白い、つくってやるから売れ!」の一言ではじめから20ケースも生産してきた。慌ててラベルを作成し、ビールの名前を決めて、出荷体制を整えた。その名も「麻物語」。
このビールは、企画提案したNPOに一本当り十円が寄付されるしくみである。NPOと地元企業のいい関係がここにある。全国でこのようなパートナーシップがNPOの新しい資金調達のあり方として定着していってほしいと思う。
私は、二年ほど前からベンチャービジネスの異業種交流会に参加したり、ビジネスセミナーを受け、自分でいくつかの商品を試作・商品化してきた。まだまだ少ない経験でしかないが、確実に次のことが言えそうである。新しい商品・新しいサービスは
一、今までのものよりも十分の一のコストダウンを実現したものか?
一、今までのものよりも十倍以上の付加価値があるか?
このどちらかでないと何をやっても中途半端な商品・サービスのような気がする。資金力、販売ルートがあらかじめある大企業であれば、広告宣伝でカバーできるかもしれない。しかし、中小企業やベンチャー企業には、積極的にこの
条件に近いものを開発していくことが求められると思う。これは環境に良い・悪い、デザインが良い・悪い、性能が良い・悪いを含めて、この条件のクリアを目指してもらいたいものである。
それから、私のふるさとである滋賀県は近江商人発祥の地として有名である。その経営理念・哲学は、とても素晴らしいので紹介しておく。地球環境問題や製造物責任(PL法)などの企業の社会的責任についてどう考えるかを的確に表現している。
「自分よし、相手よし、世間よし=三方経営」
これは、自社利益を確保し、顧客(相手)を満足させ、世間(社会・法律・環境)をよくする商売でないといけないという価値観である。自分と相手と世間の三方がよくないといずれ自分に跳ね返ってくるのである。企業倫理という言葉が出てくるずっと前の江戸時代からいわれている「三方経営」。自分の利潤を追求するのが企業の使命だが、忘れてもらうと困るものがあるのだ。
滋賀県では、琵琶湖の汚染問題などで比較的、環境意識が高く、今では、この三方にもう一つ「地球よし」というのを加えて、地元の環境産業育成に非常に力を入れるようになっている。「経済と環境のバランスをとるべきだ」等の学生のきれいごとが通
用しない世界で日夜、格闘していると目の前の課題解決に追われてがちである。そんなとき、この三方経営の哲学を思い出し、自分の原点に振り返ることを心がけている。
文: 赤星栄志
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