A SEED JAPAN「ESGウォッチプロジェクト」は、ESG投資信託の「ESGウォッシュ」(ESG配慮をうたいながら実際の運用プロセスが異なること)を無くすことを通して、市民が自身の資産形成だけでなく持続可能な社会の実現にも貢献できる社会の実現を目指して活動しています。
今、活動のテーマとしているのが、「バイオマス発電」です。ここでは、11月24日に開催されたオンラインセミナー「カナダ・ブリティッシュコロンビア州の林産業・木質ペレット生産現場 視察報告」で、ESGウォッチプロジェクトの鈴嶋(かつ)が発表した内容を報告いたします。また、関連する12月開催のセミナー2つ(A SEED JAPAN広報協力)をご紹介をします。
今年の9月、カナダ・ブリティッシュコロンビア(BC)州の林産業及び木質ペレット生産の現場視察に、A SEED JAPAN ESGウォッチプロジェクトのかつ(鈴嶋)が参加。11/24(木)の報告会(主催:地球・人間環境フォーラム、Mighty Earth)では、「BC州の内陸温帯雨林とそこで見た伐採・植林の実態」と題して発表しました。
ツアーの前半では、Revelstokeという町の内陸温帯雨林(Inland Temperate Rainforest: ITR)の原生林を視察しました。内陸温帯雨林は米アイダホ州北部からBC州にかけて、ロッキー山脈沿いに広がる豊かな森林地帯のことです。常緑の針葉樹であるCedar(ベイスギ)・Hemlock(ベイツガ)が広がり、樹齢500年から1000年というような古い木をいくつも見ることができます。
内陸温帯雨林の原生林では、「空気中の窒素を取り込んで木々の成長を助けるもの」「マウンテンカリブーの重要な食料になるもの」多様な役割を持つ地衣類が見られます。古い木は倒れて林内に残り、炭素を固定し、次の若木の養分になっています。
このように、生物多様性や炭素蓄積の観点で重要な内陸温帯雨林でさえ、BC州では製材やパルプ用に伐採されています。 現地の森林保護活動家の話によると、Revelstokeの森林がペレットにされていることはないようですが、原生林の伐採によって発生する残材(伐採地に残された木)や製材端材(木から必要な部分を取ったあとの残り)がペレットにされている可能性はあります。
また、現地の人の話からは、BC州では森林の皆伐が一般的であること、皆伐地は森林火災のリスクが高いこと、伐採後の植林によっては元の様な豊かな状態への回復が難しい現状が浮かび上がりました。「森林を持続可能に管理している」「バイオマスはカーボンニュートラル」という考え方を鵜呑みにしてはいけないと言えます。
※今年7/24(日)には、木質バイオマス発電の持続可能性についての内部勉強会も開催しています。⇒https://www.aseed.org/report/220724esg_studysession_biomasspower
現地の研究者に、BC州の原生林の価値とその伐採状況、同州の森林政策の課題、さらには原生林の伐採と木質ペレット生産の関係を、データを用いて解説していただきます。
【開催概要】
・日時:2022年12月20日(火)9:30~11:00
(BC州との時差が大きいため、朝の開催となります)
オンライン会議システムzoomを使用。
・同時通訳付
・参加費:無料
【講演者】
・レイチェル・ホルト氏(森林生態学者、Verdian Ecological Consulting/代表):「BC州の原生林の価値とその伐採状況、同州の森林政策」 (仮)
・ベン・パーフィット氏 (Canadian Center for Policy Alternatives/資源政策アナリスト):「原生林の伐採と木質ペレット生産の関係」(仮)
詳細、お申込みはこちら!https://www.gef.or.jp/news/event/221220_seminar_bcforestbiomass/
ESG投資やトランジション・ファイナンスの対象となる一方で、“カーボンニュートラル”とされている木質バイオマスの燃焼は、実は石炭より多くのCO2が排出されると科学者に指摘されています。また日本の木質バイオマス燃料輸入先であるカナダや米国、ベトナムでは、森林の持続可能性に関する懸念が現地NGOや研究者から伝えられます。
気候変動対策として正しい方向に進んでいるのか、2023年末までの排出削減目標の上積みが求められる中、早急な検証が必要です。
【開催概要】
【講演者】
1.「バイオマス発電と石炭バイオマス混焼のCO2排出量」
歌川学氏(国立研究開発法人産業技術総合研究所 エネルギー・環境領域 主任研究
員)
2.「GHGプロトコル、TCFD、SBTiにおけるバイオマス燃焼の排出カウントー企業は
何をどう公表すべきか?」
川上豊幸氏(熱帯林行動ネットワーク(JATAN))
詳細、お申込みはこちら!https://www.gef.or.jp/news/info/221223_seminar_biomassghg/
ESGウォッチでは、引き続きバイオマス発電の問題を追っていきます!
皆さんのご参加お待ちしております!
2022-12-14