政府も企業も「CSR」・「エコ」・「ソーシャル」という言葉に注目するようになった現在、環境・人権、その他の社会問題は解決されたでしょうか?
福島原発事故の「収束」もままならず、食料自給率は下がり続け、安保改正には積極的でありながら、「2030年までに石炭火力発電を26%にします!」と公言して環境NGOから「化石賞」を与えられた日本政府。環境アセスメントをしっかり実施しないまま開発に踏み切る企業とそれに投融資する金融機関の事例も報告されています。
何か、おかしい、かもしれない…。
そんな中、次世代を担うワカモノとしてこの時代をどう見据えればいいのか?
戦後70年目の今年、アースデイ東京2015の1週間前というタイミングで企画したこのシンポジウム。
テーマは「エネルギー」「食」そして「経済」。
3つの立場からそれぞれの「What’s Next?」を考えました。
「Fair Finance Guide Japan(国際的なメガバンクのCSR比較と日本の現状について)」
A SEED JAPAN 土谷和之
●私たちの預金が環境破壊や人権侵害に!?
わたしたちがお金を預けている銀行は、さまざまな企業・事業にお金を投融資しています。
その中には、残念ながら、環境破壊、人権、貧困などの社会問題に関与している企業・事業が含まれている場合もあります。
そこで昨年から日本とそれ以外の6か国で、Fair Finance GuideというWebサイトを運営しています。これは大手銀行の投融資方針の社会性を13テーマ別・各テーマ10点満点で「格付け」し、ウェブサイトで公開するというもの。
このサイトでできることは以下の3つです。
1)どの銀行がよりフェアな方針を掲げているかを知ること
2)ウェブサイトを通じて銀行へ「もっと方針を改善してほしい」というメッセージを送付すること
3)口座の預け替えのための情報を得ること
●オランダでは5年間で40万人がサイトを訪問!
Fair Finance Guideは、2009年にオランダでスタートした「Bankwizer」というウェブサイトが元となっています。オランダではこの5年間で約402,000人がサイトを訪問し、約17,000人が銀行に方針改善を求めるメッセージを送信しました。するとオランダ国内の銀行の投融資方針が、「兵器産業」「人権」「気候変動」等のテーマにおいて160以上の項目で改善したのです。
●日本の金融機関はまだまだ低水準
現在、日本では大手5銀行(三菱UFJFG、三井住友FG、みずほFG、りそなHD、三井住友トラストHD)を評価していますが、合計点で最高のみずほFGでも130点満点中29点と、けっして高い水準ではありません。
日本の銀行は環境融資等について積極的な取り組みを見せている部分もあるのですが、それが投融資全体の方針に反映されていないため、どうしてもFair Finance Guideでの点数は低くなってしまうのです。
●日本で取組みを広めるには、一人一人のアクションが必要!
私たち1人1人が、お金を預けっぱなしにするのではなく、銀行の取り組みに関心を寄せることが大切です。
≫Fair Finance guide Japan
「お金の地産地消白書、NPOバンクと金融機関との協働について」
コミュニティ・ユース・バンクmomo 木村真樹氏
●地域の課題解決のカギは民間金融
もともとASJ の事務局長をしていた。momoをはじめて10年が経つ。
自分自身、10年経って地元に帰って結婚し子供も生まれた。しかし地域は課題を抱えている。そもそも仕事がない、子育てしながら仕事できない、介護保険も本当にもらえるのか、など。問題が出てきたときに解決にはお金が必要。それにも関わらず、問題解決を担うのは行政だった。でもこれからは人口減になって労働人口も減っていく。税収が増えていかない。するとおカネは民間から、地域の金融機関から持ってくる、そんな仕組みが必要になる。
●NPOの事業フェーズに合わせた仕組みを確立
問題の解決に先取りしているNPOだが、お金の流れはまだまだ足りない。
momoの特徴は「momoレンジャー」。お金の支援だけではなくて人が関われる仕組みを作っている。
本当に地産地消を実現したいなら、年間3000万の融資を、自分が歳を取るまで続けたい、それには地域の金融機関とつながらないといけない。
momoの融資で支えられない団体は、寄付の仕組みでサポートする。そこで4年前から地域の中のおカネの流れを作ってきた。あいちコミュニティ財団という公益財団だ。
事業のステージが上がってきたらmomoが貸し、もっとステージが上がってきたら金融機関が融資する、という仕組み。フェーズに合わせてお金を仲介する仕組みが大事。
●これからはNPO産業も期待される
なぜ始めたか?金融機関出身でそこを飛び出してきたのだが、NPOの課題解決と金融機関の人材育成を両立したい。
信金にはNPO向け融資も、あることはある。でも職員さんの意識などがないとそれが活用されない。
だから、プロボノプロジェクトを二つの信金さんでやっており、関わるボランティアは2年間で100人。
こうした取組を各地に広げていきたくて、「おカネの地産地産白書」を作った。
地域にはお金がある。167の信金がある。でも預貸率は低くなっている。なんで低くなっているのか?というと、貸すところがないから。ではどの産業が期待されるべきかというと、NPO。地域の確かなニーズなのではないかと考える。NPOもお金を借りていて、これまで50団体以上、1億2千万円ほど融資してきた。しかし貸し倒れがない。
最後に。金融庁も地域密着型金融をうたっている。地産地消白書に書いている目指すべきことは、政府も目指しているところだ。政府も期待しているところのはず。
NPOは成り立ち自体がリーダーシップそのものだ。
≫コミュニティ・ユース・バンクmomo
テーマ2では、地域金融機関のパイオニア3名にお話をいただきました。
◇中央労働金庫 高瀬美由紀氏
A SEED JAPANと協働で10年間続けてきた人材育成プログラムの意義についてお話しいただきました。SRIやESG投資を学ぶなど、時代に合わせたテーマでの研修企画によって、ろうきんの理念やミッションを再認識できる場だと仰っていただきました。
その他、アースデイ東京「エコ金融エリア」でのA SEED JAPANとの共同出展についてはディスクロージャー誌でも公開されています!
≫http://chuo.rokin.com/about/disclo/2014/P17-18.pdf
◇多摩信用金庫 長島剛氏
多摩信用金庫の「価値創造事業部」の部長として、社会貢献に関する本業を通じた取組み促進しています。特に注目すべきは「たまでん債」。市民の発電事業と市役所をつなぐ役割を金融機関が担った例として注目されています。
たまでん債とは?≫多摩電力合同会社HP
◇東京コミュニティパワーバンク 坪井眞里氏
テーマ2の最後の登壇は、東京CPB理事長の坪井真里さん。東京CPBさんの「What’s Next?」の一つは「対話」。融資における審査の仕組みの確立と「ともだち融資団」を発展させた「100%ともだち融資団」。ひとつの事業に対し、それを応援したい市民のおカネを集めて融資する制度。事業家の人たちを支援するホンキの取組が始まっています。
東京CPBとは?≫http://www.tokyo-cpb.org/
分科会1「食のWhat‘s Next?~グリーンコンシューマーの歴史とこれから~」
ゲスト:有川真理子さん、坪井眞里さん
認定NPO法人環境市民から有川さんをお呼びし、グリーンコンシューマーの考え方を切り口にお話しいただきました。特に注目すべきは「消費者の教育」と「情報公開」。消費者が社会を良い方向にも悪い方向にも変える力を持っていることを知る教育と、ITを活用した情報提供により問題や代替手段を手軽に知ることができることで、結果として解決のための行動を起こしやすくするのです。「行動」の一つに、そう、私たちの使うおカネがあります。そう考えると、おカネを使って買い物をすること自体が「未来への投票」ともいえます。
環境市民≫http://www.kankyoshimin.org/
分科会2「エネルギーのWhat‘s Next? ~電力自由化後のエネルギー」
ゲスト:吉田明子さん、長島剛さん
FoEJapanの吉田明子さんから、「パワーシフトキャンペーン」についてお話がありました。
2016年から電力の小売り自由化が始まります。簡単に言うと、携帯電話を買うときにいくつかの電話会社から選ぶのと同じように、電気を選ぶ時代が始まるのです。ところが今は、電力事業者への融資額や電力料金の価格が見通せないことが問題となっています。そこで、パワーシフトキャンペーンを実施し、署名を政府に届けることを通して自然エネルギーが普及しやすい社会を作ろうとしているのです。
でももし、電力料金が原発・石炭より自然エネルギーが高かったら…?「高い分は、将来のための寄付・投資だと思って払おう!」という意見があがりました。
パワーシフトキャンペーンとは?≫http://power-shift.org/
分科会3「おカネのWhat’s Next?お金の地産地消を東京でも!」
ゲスト:高瀬美由紀さん、木村真樹さん
>私たちの暮らす社会で、おカネがどのようなところに使われたらよいかという『理想のお金の流れ』を具体的に考えました。
まず特定の地域を設定し、そこにいるステイクホルダー、地域の課題をあげていきました。そこで気づいたのは、お金の流れを考える場合でも、まず初めに地域課題を見つけること。それが意外と難しい。
このように考えてみると、あらゆる場面で使うオカネは、ただ消費するときのツールではなく、私たちの未来の生活そのものを作るアクションになりうることがわかります。融資・寄付・投資を通して、様々なステイクホルダーとの連携が、今後ますます重要となります。今回は、その第一歩をみなさんと踏み出せた、そんなシンポジウムでした。
A SEED JAPANの活動にご参加ください!
≫ http://www.aseed.org/recruitment/
2015-07-15