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日本のメディアの構造問題

日本のマスメディアが抱える構造的な問題について

日本のマスメディアは様々な問題を抱えているといわれている。
しかし、そのような問題点が大々的に報道されることはほとんどない。なぜなら自分たちに都合の悪い情報を報道することは極めてまれだからだ。
この特集ではまず現状をきちんと把握するために日本のマスメディアの問題点について、新聞やテレビを中心に簡単にまとめてみたい。

1.宅配制度

日本の主要メディアの一つである新聞に競争原理、つまり「よい記事を載せれば売り上げが上がる」という比較的あたりまえと思われる原理が働きにくい原因は、「宅配制度」が一因であると考えられている。もちろんよい記事を載せても売り上げが変わらなければ、新聞各社はよい記事を載せる動機(インセンティブ)が働かず、情報が劣化していく危険性が高い。
宅配制度とは、新聞が毎日各家庭に配達されることを指す。日本では当たり前の光景だが海外にはこのような制度はなく、駅や街頭で新聞を買うのが一般的だ。
もちろんこのような宅配制度は新聞各社の経営の安定化につながる。しかし、月単位や年単位で契約する私たちにとっては、ほしいニュースをそのつど主体的に買うことはできず、配達される新聞を受動的に読むことになる。
ある新聞がスクープを載せたとしても、家に新聞が配達されている以上、別の新聞を買うことは稀だろう。
また契約も記事の善し悪しとは別の要素(景品の洗剤やプロ野球のチケット、惰性、販売員の営業力など)によって決まることも多い。

2.記者クラブ

たいていの官公庁や警察には記者クラブと言われる組織がある。
この記者クラブは官公庁や警察内に記者室を持ち、独占的な情報提供を受ける。また排他的組織であり、記者クラブ加盟社以外(例えばフリージャーナリストや週刊誌、海外メディア)などは取材すらさせてもらえない。
記者クラブの問題点はその閉鎖性とともに、「おかみ」の情報を垂れ流すだけの報道になりやすく、メディアが本来果たすべき権力監視がなされないとの批判がされる。これはとても重要な指摘である。
例えば松本サリン事件では警察発表を垂れ流し、犯罪とは無関係であった河野義之氏をすべての社が共通して犯人扱いするような事態が生じた。また、そもそも「おかみ」に都合の悪い情報や批判的な記事を掲載すれば情報をとれなくなる危険があるし、取材対象による情報操作を引き起こしやすい。

3.クロスオーナーシップ

日本の新聞社は放送事業に資本参入しているため、メディアは「新聞-テレビ-地方ローカル局」(例えば読売新聞-日本テレビ-よみうりテレビ)と系列でつながっており、このことをクロスオーナーシップと呼ぶ。本来新聞とテレビは独立してお互いを監視することが望ましいとされているため、クロスオーナーシップは多くの国で禁止されている。このような考え方を「集中排除原則」と呼ぶ。例えば新聞社の問題点をテレビが報道したり、テレビの問題点を新聞が報道するようなことは日本ではまず起こらない。
また新聞発行は自由だが、テレビは政府の許認可事業である。
そのため政府が許認可権をたてにテレビに圧力をかければ新聞社にも影響が波及してしまうため、メディアの構造として脆弱である。

4.広告

新聞社の収入の約半分は購読料だが、残り半分は広告費とされている(テレビにいたってはそれ以上の収入を占めている)。そのため新聞やテレビでは大きな広告主を批判するような報道なされにくい。広告の出稿主がメディアに直接圧力をかけることはなくても、広告出稿を取りやめれば影響は大きいからである。
実際に朝日新聞がキャノンの請負偽装問題を扱ったとき、キャノンは朝日新聞から広告を引き揚げたといわれている。

まとめ

日本のマスメディアが抱える問題はどれも深いが、それでも、私たちは多くの情報源をマスメディアに依存している。マスメディアの情報を受け取るときには、例えば「何が報道されるか」だけではなく「何が報道されないか」も注視しなければならない。また「報道される」(「報道されない」)ことによって誰が利益を得ているのかも
「メディアリテラシー」が重要だといわれて久しい。マスメディア自体からも「メディアリテラシー」の重要性が指摘されることがある。しかし、「メディアリテラシー」とはメディアの伝える情報を批判的に読み解く力である。
情報を批判的に読み解くためには、まず情報を提供するメディアの側がどのような問題を抱えているのかきちんと知ることがとても大切である。